「BMI 23~25」が2型糖尿病成人にとって理想的な体重管理 心血管疾患による死亡リスクが最低に 欧州肥満学会議

2024.04.03
 2型糖尿病の成人の心血管疾患による死亡リスクを最小限に抑えるための理想的な体重を特定したと、欧州肥満学会議(ECO)が発表した。

 65歳以下の成人の場合、体格指数(BMI)を23~25の正常範囲内に維持すると、死亡リスクは最低になるとしている。ただし、65歳以上の高齢者の場合は、BMIが26~28の中程度の過体重でリスクは低かった。

 英国バイオバンク研究に参加した2万2,874人を対象に解析したもので、詳細は、5月にイタリアのベニスで開催される第31回欧州肥満学会議(ECO 2024)で発表される。

65歳以下はBMI 23~25で死亡リスクは最低に 65歳以上はBMI 26~28でリスクは低下

 2型糖尿病の成人の心筋梗塞・脳卒中・慢性腎臓病などを含む心血管疾患による死亡リスクを最小限に抑えるための理想的な体重を特定したと、欧州肥満学会議(ECO)が発表した。

 65歳以下の成人の場合、体格指数(BMI)を23~25の正常範囲内に維持すると、死亡リスクは最低になるとしている。ただし、65歳以上の高齢者の場合は、BMIが26~28の中程度の過体重でリスクは低かった。

 とくに2型糖尿病患者にとって適正体重を維持することは、心血管疾患や死亡のリスクを軽減するために重要だが、その年齢によってBMIの最適な範囲が変わるかは明らかにされていない。

 そこで、中国湖北省の襄陽中央病院および湖北文理学院附属病院のShaoyong Xu氏らは、英国バイオバンクに2006~2010年に登録され、登録時に2型糖尿病の診断を受けた成人2万2,874人(平均年齢は59歳、女性が59%)を対象に、BMIと心血管死のリスクとの関連での年齢差について解析した。なお対象から、心血管疾患の既往歴のある患者は除外しなかった。

 医療記録を使用し、心臓血管の健康状態について約13年間追跡して調査した。期間中に891人(3.9%)が心臓血管疾患により死亡した。

 研究グループは、65歳以上の高齢者と65歳未満の中年者の2つの年齢グループに分けデータを解析し、BMI・腹囲径・ウエスト身長比などの変数と心血管死リスクとの関連を評価した。

 さまざまな年齢グループで、最適なBMIのカットオフポイントを算出し、年齢・性別・喫煙歴・アルコール摂取量・運動量・病歴などの心血管転帰に関連する因子の影響を調整したうえで、心血管代謝リスク因子との関連を調べた。

 その結果、BMIが過体重範囲(25~29.9)にある中年グループは、体重が正常範囲(25未満)にあるグループと比較し、心血管疾患による死亡リスクが13%高いことが判明した。

 一方で、高齢者グループでは、BMIが過体重範囲(25~29.9)にある場合、BMIが正常範囲(25未満)にあるグループと比較し、死亡リスクの18%の低下と関連していた。

 BMIと心血管死亡リスクの関連で、年齢による階層化後でもU字型のパターンが示され、最適なBMIカットオフポイントは高齢者グループと中年グループで異なることが示された。中年層の最適なBMIカットオフポイントは24だったが、高齢者グループの場合は27になった。

腹囲が増加すると心血管死のリスクは上昇
2型糖尿病患者の最適なBMIの管理は年齢によって異なる可能性が

 また研究グループは、ウエスト周囲径およびウエスト身長比の両方と、心血管死のリスクとのあいだに正の関係があることも明らかにした。腹囲が増加すると、心血管死のリスクもそれに応じて上昇した、対象集団を高齢者と中年者のカテゴリーに分けて解析しても、この上昇傾向は一貫していた。

 ウエストと身長の比率でも同様のパターンがみられたが、重要なBMIカットオフ ポイントは特定されなかった。

 「臨床現場では、さまざまな年齢層に合わせて体重管理の推奨を調整することで、個別の治療計画の作成が可能になる。重要なことは、2型糖尿病患者の最適なBMIの管理は、従来の心臓代謝の危険因子とは関係なく、年齢によって異なることが実証されたことだ」と、Xu氏は述べている。

 「今回の調査結果は、肥満ではないが中程度の過体重である高齢者にとって、心血管疾患による死亡リスクを軽減するには、体重を減らすよりも維持する方がより現実的な選択である可能性を示唆するものだ」としている。

 研究結果は、肥満が致命的な疾患に対し、ある程度の防御効果をもたらす可能性があることも示している。高齢者のこの「肥満パラドックス」を説明できる可能性のある生物学的メカニズムとして、骨量減少率の低下や、転倒や外傷エピソードの軽減、および過栄養による急性ストレス障害への対応などとの関連を指摘している。

 将来的には、腹囲などを用いてメタボリックシンドロームのリスクとの関連についても調査する必要があるとしている。

 なお、今回の研究は観察研究であるため、原因を特定することはできず、心血管疾患による死亡者数が少ないこと、心血管疾患の種類や具体的な治療法に関する情報がないことなど、限界があることも付け加えている。

 また、英国バイオバンクの参加者のほとんどが白人であるため、その調査結果はアジアなど他の民族的背景をもつ人には当てはまらない可能性があることも指摘している。コホート研究の性質により、人体計測は研究の開始時にのみ評価され、追跡期間中に体重が変化している可能性があるため、潜在的な分類エラーが部分的に生じている可能性もある。

欧州肥満学会議 (ECO)
UK Biobank
UK Biobank study identifies ideal body weight for adults with type 2 diabetes to minimise risk of dying from cardiovascular disease (欧州肥満学会議 2024年3月29日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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