アジア人も減量により2型糖尿病が寛解 6.1%が達成 体重を多く減らした患者ほど寛解率が高く再発率も低い

2024.04.10
 2型糖尿病患者が診断から1年以内に体重を大幅に減少すると、6.1%が糖尿病の寛解を達成し、体重を多く減少した患者ほど寛解率が高いことが、香港の2型糖尿病患者3万7,326人を追跡した研究で明らかになった。

 さらに、糖尿病の寛解を達成した患者の67.2%は、ふたたび高血糖を再発したが、体重を多く減らした患者は高血糖の再発リスクが低い傾向があることも示された。

 アジア人でも、2型糖尿病の診断から1年以内の患者が体重を大幅に減少することは、糖尿病寛解の達成の可能性を増加し、寛解を達成した後に高血糖を再発するリスクを減少することと関連していることが示された。

減量により1年で6.1%が2型糖尿病の寛解を達成 その後は67.2%が高血糖を再発

 これまで持続的な減量により2型糖尿病の寛解が達成可能であることを実証した臨床試験が報告されているが、アジア人を対象とした試験は少なく、またリアルワールドでの体重管理を通じて、糖尿病の寛解を達成し維持できるかについてはよく分かっていない。

 そこで香港中文大学(CUHK)糖尿病肥満研究所のAndrea O. Y. Luk氏らは、「香港糖尿病リスク評価・管理プログラム」(RAMP-DM)に参加した香港の2型糖尿病患者3万7,326人を追跡して調査し、糖尿病診断後1年後の体重変化と2型糖尿病の寛解およびその持続との関連について調査した。

 その結果、中央値7.9年の追跡期間中に、6.1%(2,279人)が糖尿病の寛解を達成し、発症率は1,000人年あたり7.8人[95%CI 7.5~8.1]であることが示された。体重を多く減少した患者ほど寛解率が高いことも分かった。

 RAMP-DMは、香港の糖尿病患者の代謝異常と合併症について定期的にスクリーニングにし包括的に評価している集団ベースの観察コホート研究。研究グループは今回、2000年~2017年にRAMP-DMに登録された、新規に2型糖尿病と診断された3万7,326人を対象に2019年まで追跡して調査した。

 なお糖尿病の寛解の定義は、薬物療法を行っていない状態が3ヵ月以上持続し、6ヵ月以上の間隔をおいて2回連続してHbA1c 6.5%未満が測定された場合とした。

 その結果、糖尿病診断時の年齢・性別・評価年・BMI・その他の代謝指標・喫煙・飲酒・薬物使用などの条件を調整した後で、診断から1年以内に体重が増加した患者と比較した、糖尿病寛解のハザード比(HR)は次の通りになった――。

  • 10%以上の体重減少を達成 糖尿病寛解のHRは3.28[95%CI 2.75~3.92、p<0.001]
  • 5%~9.9%の体重減少を達成 糖尿病寛解のHRは2.29[95%CI 2.03~2.59、p<0.001]
  • 0%~4.9%の体重減少を達成 糖尿病寛解のHRは1.34[95%CI 1.22~1.47、p< 0.001]

 さらに、中央値3.1年の追跡期間中に、糖尿病の寛解を達成した患者の67.2%(1,531人)は、ふたたび高血糖を再発し、その発生率は1,000人年あたり184.8件[95%CI 175.5~194.0]だった。高血糖を再発した患者の体重が増加した患者と比較した調整HRは次の通りになった――。

  • 10%以上の体重減少を達成 高血糖再発のHRは0.52[95%CI 0.41~0.65、p<0.001]
  • 5%~9.9%の体重減少を達成 高血糖再発のHRは0.78[95%CI 0.68~0.92、p=0.002]
  • 0%~4.9%の体重減少を達成 高血糖再発のHRは0.90[95%CI 0.80~1.01、p=0.073]

 また、糖尿病の寛解は、全死因死亡リスクの31%の減少と関連していた[HR 0.69、95%CI 0.52~0.93、p=0.014]。

 「今回の研究でアジア人でも、2型糖尿病の診断から1年以内に体重を大幅に減少することは、糖尿病寛解の達成の可能性を増加し、寛解を達成した後に高血糖を再発するリスクを減少することと関連していることが示された。しかし、2型糖尿病の減量の重要性が十分に認知されていなかった時期のリアルワールドでの糖尿病管理では、糖尿病の寛解率とその持続可能性の両方が低かった」と、研究者は述べている。

 「研究により、医療政策の立案者が体重管理に早期介入し、糖尿病の寛解への取り組みを計画し、実行することが必要であることを示すエビデンスが加えられた」としている。

 研究成果は、「PLOS Medicine」に掲載された。なお今回の研究の主な限界として、糖尿病の寛解の定義に使用したHbA1c値が他の疾患による影響を受けている可能性や、肥満症の外科療法に関するデータがないことなどを挙げている。

1-year weight change after diabetes diagnosis and long-term incidence and sustainability of remission of type 2 diabetes in real-world settings in Hong Kong: An observational cohort study (PLOS Medicine 2024年1月23日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

脂質異常症の食事療法のエビデンスと指導 高TG血症に対する治療介入を実践 見逃してはいけない家族性高コレステロール血症
SGLT2阻害薬を高齢者でどう使う 週1回インスリン製剤がもたらす変革 高齢1型糖尿病の治療 糖尿病治療と認知症予防 高齢者糖尿病のオンライン診療 高齢者糖尿病の支援サービス
GLP-1受容体作動薬の種類と使い分け インスリンの種類と使い方 糖尿病の経口薬で最低限注意するポイント 血糖推移をみる際のポイント~薬剤選択にどう生かすか~ 糖尿病関連デジタルデバイスの使い方 1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプ・CGMなど) 二次性高血圧 低ナトリウム血症 妊娠中の甲状腺疾患 ステロイド薬の使い分け 下垂体機能検査
NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療-減量・代謝改善手術- 骨粗鬆症治療薬 脂質異常症の治療-コレステロール低下薬 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症 FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症 褐色細胞腫

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料