将来の認知症発症リスクを予測するツールを開発 久山町研究の24年間の成果を結実 九州大学
認知症のない65歳以上の久山町住民約800名を24年間前向きに追跡し、健康診断で測定できる因子から認知症の発症確率を予測するための統計的予測モデルを作成。
その結果、喫煙習慣、日中の活動量や生活習慣病(高血圧、糖尿病など)から、10年後の認知症発症確率を高い精度で予測できることを明らかにした。
高血圧や糖尿病などから認知症の発症確率を高い精度で予測
研究は、九州大学大学院医学研究院の二宮利治教授、本田貴紀助教(衛生・公衆衛生学分野)、中尾智博教授、小原知之講師(精神病態医学)らの共同研究グループによるもの。研究成果は、米国アルツハイマー病協会の医学誌「Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring (DADM)」に掲載された。
認知症は全世界でその患者数が急増している疾患であり、認知症を発症するリスクが高い人を、発症する前に早期に発見する適切な予防的介入やケアの導入が期待されている。
そこで研究グループは、認知症のない65歳以上の久山町住民約800名を24年間前向きに追跡し、健康診断で測定できる因子から認知症の発症確率を予測するための統計的予測モデルを検討した。
その結果、喫煙習慣、日中の活動量や生活習慣病(高血圧、糖尿病など)から、10年後の認知症発症確率を高い精度で予測できることを明らかにした。さらに、この予測モデルをもとに容易に計算可能な簡易スコアを作成。将来の認知症発症リスクが高い人を早期に見つけ出し、適切な介入につなぐツールとなる重要な知見としている。
久山町研究は、人口約8,400人の福岡県久山町住民を対象とした、50年間以上にわたる生活習慣病(糖尿病・脳卒中・虚血性心疾患・がん・認知症など)の疫学調査として、国内有数の実績を挙げている。今回の研究について「長期にわたる追跡調査から精度の高い発症予測モデルが開発できました。今後、実用化に向けた取り組みを進めていきます」と、研究者は述べている。