セマグルチドで非動脈炎性前部虚血性視神経症のリスクがわずかに上昇

2025.03.18
 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)のセマグルチドによって、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)の発症リスクが、ごくわずかながら上昇する可能性のあることを示唆するデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ウィルマー眼研究所のCindy Cai氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に2月20日掲載された。

 非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)は、視神経の虚血により視野欠損や視力低下、時に失明に至る疾患。セマグルチドがNAION発症リスクを高めるという報告と、その可能性を否定する報告が、昨年ほぼ同時に発表されている。これを背景としてCai氏は今回、複数のデータベースを統合した大規模サンプルを用いた後ろ向き研究を実施した。

 解析には、医療費請求データや電子カルテなど計14件のデータを使用し、二つの手法でNAION発症リスクを検討した。

 1つ目は、セマグルチドが新たに処方された患者と、セマグルチド以外のGLP-1RA、およびGLP-1RA以外の血糖降下薬が処方された患者を比較する、実薬対照コホートデザインによる検討。2つ目は、同一患者内で当該薬剤を使用していた期間と使用していなかった期間とでリスクを比較する、自己対照研究デザインによる検討。

 解析対象は3,710万人の2型糖尿病患者であり、そのうち81万390人がセマグルチドの新規使用者だった。NAIONの発症リスクの検討には、1件の診断コードのみで定義した高感度モデルと、90日以内に2件以上の診断コードが記録されている場合で定義した高特異度モデルという2パターンを用いた。NAION発症率は、高感度モデルでは10万人年当たり14.5、高特異度モデルでは同8.7だった。

 実薬対照コホートデザインの高感度モデルでは、セマグルチドはSGLT2阻害薬のエンパグリフロジン、DPP-4阻害薬のシタグリプチン、SU薬のグリピジドとの比較でNAIONリスクに有意差はなかった。高特異度モデルでは、エンパグリフロジンとの比較でのみ、リスクが有意に高かった[ハザード比(HR) 2.27、95%信頼区間 1.16~4.46]。

 自己対照研究デザインにおいてセマグルチドは、高感度モデルで発生率比(IRR) 1.32[同 1.14~1.54]、高特異度モデルでIRR 1.50[同 1.26~1.79]と有意なリスク上昇が認められた。また、別のGLP-1RAであるエキセナチドも高特異度モデルでIRR 1.62[1.02~2.58]と有意なリスク上昇が認められた。

 著者らは「この関連のメカニズムは不明」としたうえで、「セマグルチドが有するさまざまな副次的効果のベネフィットと、まれではあるが失明の恐れのある眼疾患のリスクを比較検討することを、臨床医に対して強く推奨する」と述べている。

 なお、数人の著者が医薬品関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

[HealthDay News 2025年2月26日]

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