SGLT2阻害薬「ジャディアンス」のCKD対象の第3相試験「EMPA-KIDNEY試験」を早期終了 有効性を示す肯定的なエビデンスを受け

2022.04.05
 ベーリンガーインゲルハイム、イーライリリー・アンド・カンパニーなどは3月16日、SGLT2阻害薬「ジャディアンス」(一般名:エンパグリフロジン)について、有効性を示す肯定的なエビデンスを受け、慢性腎不全(CKD)の成人患者を対象とした第3相試験「EMPA-KIDNEY試験」を早期終了すると発表した。

 これは、独立データモニタリング委員会が正式な中間評価を行い、試験の早期終了を勧告したのを受けたもの。同試験は、CKDでのSGLT2阻害薬の臨床試験としては大規模・広範囲の臨床試験。詳細な結果は、今年中に発表される見込みとしている。

慢性腎臓病でのSGLT2阻害薬の第3相試験であるEMPA-KIDNEY試験

 オックスフォード大学の医療研究協議会ポピュレーションヘルス研究ユニット(MRC PHRU)、ベーリンガーインゲルハイム、イーライリリー・アンド・カンパニーは、慢性腎不全(CKD)の成人患者を対象としたEMPA-KIDNEY試験について、独立データモニタリング委員会の推奨をもとに早期終了することを発表した。この決定は、正式な中間評価を行った結果、CKDの成人患者でのジャディアンスの有効性に関して、試験計画書に規定された基準を満たした結果を受けて提出された勧告に従ったもの。

 同試験は、CKDを対象としたSGLT2阻害薬の大規模臨床試験で、実臨床でみられることの多いCKDの成人患者で、過去に行われたSGLT2阻害薬の臨床試験では対象外で、重要なアンメットニーズがあった患者も組み入れられ、ジャディアンスの有効性と安全性を検討した。対象には以下の患者が含まれる。

・ eGFR値(腎機能検査値)の軽度~重度の低下がみられる患者
・ 尿中アルブミン濃度(尿中タンパク質の一種)が正常~高値の患者
・ 糖尿病患者および非糖尿病患者
・ 様々な基礎疾患に起因するCKDの患者

 EMPA-KIDNEY試験は、6,600人を超えるCKDの成人患者を対象とした、学術機関が主導する大規模な二重盲検無作為化プラセボ対照試験。試験の実施、解析と報告は、オックスフォード大学MRC PHRUが行う。主要評価項目は、腎臓病の進行または心血管死の複合評価項目。重要な副次評価項目は、心血管死または心不全による入院、すべての入院、および全死因による死亡。これにより、EMPA-KIDNEY試験では、入院治療の必要性を重要な副次評価項目とした。

* 末期腎臓病(維持透析の開始または腎移植)、eGFRが10 mL/min/1.73 m2未満で持続、腎死、またはeGFRの無作為化時点からの低下率が40%以上で持続と定義。

 同試験は、ランドマーク試験であるEMPA-REG OUTCOME試験とEMPEROR試験に続いて行われた試験で、いずれの試験でも心臓および腎臓に対するジャディアンスの有益性が立証された。EMPA-REG OUTCOME試験は、SGLT2阻害薬の心血管アウトカムに対する試験として心血管と腎臓のアウトカムに対する有益性を立証した初の試験で、心血管疾患の既往をもち、標準治療を受けている2型糖尿病の患者を対象に実施された。また、各種のEMPEROR試験のサブ解析では、慢性心不全の成人患者で、ジャディアンスが左室駆出率(LVEF)に関わらず心臓と腎臓に対して有益性を示すことが示された。

* 試験計画書で規定した探索的副次評価項目:腎症の発症または悪化、相対リスクの39%低下。顕性アルブミン尿への進行、血清中クレアチニン濃度の2倍上昇(eGFR [MDRD] ≤45 mL/min/1.73m²を認める場合)、腎機能代替療法の開始、または腎疾患による死亡と定義

 CKD患者の入院リスクは、CKDのない人の2倍に上る。CKDは、糖尿病、高血圧、肥満など、さまざまな代謝性疾患や心血管疾患と密接に関連している。

 同試験の共同試験責任医師で、オックスフォード大学公衆衛生学のクリニカルサイエンティストで腎臓科名誉顧問のWilliam Herrington准教授は次のように述べている。
 「世界では、毎年500~1,000万人がCKDのため死亡し、透析治療のため、多くの人々の生活に大きな影響が及んでいます。私たちは、できるだけ多くの患者さんで透析開始時期を遅らせ、心疾患の発症を防止することを目標として、腎機能が低下した患者さんを幅広く検討しました」。

 共同試験責任医師であるRichard Haynes教授は、次のように述べている。
 「EMPA-KIDNEY試験で検討した患者さんで、ジャディアンスが有益であることを示すことができ、喜ばしく感じています。この試験の実施を可能としていただいた参加者の皆さまに深く感謝します。試験の詳細な結果については今年中に発表する予定です」。

 「EMPA-KIDNEY試験は、従来、SGLT2阻害薬による腎臓病の進行阻止効果を検討する臨床試験において除外されたり、少数しか登録されてこなかった幅広い患者層を対象としています。今回の試験の早期終了は、腎臓病の成人患者の生活改善に向けた私たちの活動において、大きな一歩となります」と、イーライリリー・アンド・カンパニーでは述べている。

 なお、日本でのジャディアンス錠の効能・効果は、2型糖尿病、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得されていない。慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠10㎎。また、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載がある。「左室駆出率の保たれた慢性心不全での本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」

Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2016年7月28日)
Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction (New England Journal of Medicine 2021年10月14日)
Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure (New England Journal of Medicine 2020年10月8日)

ジャディアンス錠10mg ジャディアンス錠25mg 添付文書 (医薬品医療機器総合機構)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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