気候変動と医療 医師の78%が「気候変動が健康に影響を及ぼしている」と実感 「情報や資源の不足」や「時間不足」が障壁に

2023.12.05
 NPO法人日本医療政策機構(HGPI)と東京大学SPRING GXは、気候変動と健康、持続可能な医療システム、気候変動政策に関する意見を集めるため、日本の医師1,100人を対象にオンライン調査を実施した。

 医師の78.1%は「気候変動が人々の健康に影響を及ぼしている」と感じており、51.5%は「気候変動が自身の診療分野の患者の健康に影響を及ぼしている」と感じている実態が明らかになった。

 半数以上の医師は、医師は患者や自身の所属する医療施設に対して、啓発を行うべきと考えている。気候変動と健康に関するより多くの行動を起こすことを妨げる主な障壁として、「情報や資源不足」(54.4%)、「知識不足」(52.7%)、「時間不足」(51.7%)を挙げている

78%の医師が「気候変動が健康に影響を及ぼしている」と実感

 調査は、NPO法人日本医療政策機構(HGPI)と東京大学SPRING GXが、気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の開催に合わせて実施したもの。

 調査は自記式質問紙票によるオンライン調査として2023年11月に実施され、全国で診療に携わっている医師1,100人が回答した。

 その結果、医師の多くは、気候変動が日本人の健康に与える影響を実感しており、自身の患者への健康への影響も実感していることが示された。

 医師の78.1%は「気候変動が人々の健康に影響を及ぼしている」と感じており、51.5%は「気候変動が自身の診療分野の患者の健康に影響を及ぼしている」と感じていることが示された。

 気候変動が今後10年間で大きな悪影響を及ぼす健康問題として、「異常気象(洪水、台風、地滑り、山火事など)による外傷」(83.3%)、「熱関連疾患」(79.5%)、「節足動物媒介感染症」(75.8%)、「呼吸器疾患」(74.8%)などを挙げている。

出典:日本医療政策機構、2023年

 調査結果について、滋賀県のみどりのドクターズは、次のコメントをしている。

 気候変動により極端な気象がおきており、極端な寒さによる血圧・脳心血管疾患やメンタルヘルス悪化も現場では大きな問題になっています。次世代への健康格差や健康の社会的決定要因としても大きな問題ですので、現場の医師の6割が何か行いたいと思っているのは、とっても頼りになります。環境にも健康にもいいというコベネフィットを、個別性にあわせて、伝えて市民の行動を変えることができるのは、臨床医の大きな力です。

半数以上の医師が「患者に対して、気候変動と健康について啓発を行うべき」

 さらに、医師の70%は「より環境負荷が低く、持続可能性を考慮した製品、設備などの選択肢がある場合には、選択したい」と考えていることも示された。

 半数以上の医師は、医師は、患者や自身の所属する医療施設に対して啓発を行うべきであると考えており、「患者に対して、気候変動と健康について啓発を行うべき」(56.7%)、「勤務する施設が持続可能な医療への転換のための啓発を施設に対して行うべき」(57.5%)といった意見が示された。

 一方で、医師の半数以上は、気候変動と健康に関するより多くの行動を起こすことを妨げる主な障壁として、「情報や資源不足」(54.4%)、「知識不足」(52.7%)、「時間不足」(51.7%)を挙げている。

 調査結果について、同プロジェクトを担当している同機構の菅原丈二副事務局長は、次のコメントをしている。

 今回実施された調査から多くの医師が、今後10年間で気候変動が健康へのネガティブなインパクトを与えることについても考えていることがわかりました。今回のCOP28で歴史上初めての健康の日(Health Day)が12月3日に開催され、保健大臣会によって「COP28 気候・健康宣言」が採択されることは、こういった国内の状況に変化を与えるきっかけになると考えられます。

 また、同機構では次の提言をしている。

 医学生の教育に関しては、2022年の医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂で、「気候変動と医療」などの必修項目が追加されました。これにより、将来の医師の知識が増加し、医師が患者に気候リスクや気候の共同利益について教育する際により積極的な役割を果たす可能性があります。また、現在臨床に携わっている医師には気候変動と健康に関して知識をつけ、行動するための機会が不足していることが示唆されました。この知識ギャップを埋めるために、医師の生涯学習の一部にこのトピックを取り扱うことが必要となるでしょう。
(中略)
 医師は日々患者の相談を受けており、社会からの認識と信頼を得ています。この信頼は、医師に大きな個人的・政治的な影響力を与えています。医師は患者への健康的なライフスタイルの提案と社会への健康的な公共政策を提唱するために、社会的影響力を行使する可能性をもっと認識することが期待されます。

特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料