GIP/GLP1受容体作動薬「ゼップバウンド」 肥満症を適応症として承認取得
ゼップバウンドは持続性GIP/GLP-1受容体作動薬 90%超が5%以上の体重減少を達成
「ゼップバウンド」(一般名:チルゼパチド)は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。同剤は、天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子だが、GLP-1受容体にも結合するように改変されており、選択的に長時間作用するため週1回投与が可能。
両社が2型糖尿病治療薬として販売中で同分子のマンジャロと同様に、同剤は1回使い切りのオートインジェクター型注入器「アテオス」により、週1回皮下注射で投与する。
用量も同様に2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgの6規格のラインナップで、状態に応じての使い分けが可能としている。
販売名 | ゼップバウンド皮下注2.5mgアテオス ゼップバウンド皮下注5mgアテオス ゼップバウンド皮下注7.5mgアテオス ゼップバウンド皮下注10mgアテオス ゼップバウンド皮下注12.5mgアテオス ゼップバウンド皮下注15mgアテオス |
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一般名 | チルゼパチド |
効能又は効果 | 肥満症 ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。 ・ BMIが27以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する ・ BMIが35以上 |
用法及び用量 | 通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。 なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、又は4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる。 |
2024年12月27日 | |
製造販売元 | 日本イーライリリー株式会社 |
販売元 | 田辺三菱製薬株式会社 |
今回のゼップバウンドの承認は、主に、国内第3相臨床試験であるSURMOUNT-J試験において検討された、肥満症の日本人成人に対するチルゼパチドの有効性および安全性の結果にもとづいている。
SURMOUNT-J試験では、72週時の体重のベースラインからの平均変化率は、プラセボ群(n=75) 1.7%減に対して、チルゼパチド10mg群(n=71) 17.8%減、チルゼパチド15mg群(n=76) 22.7%減と、チルゼパチド両群でプラセボ群に対する優越性が示された。
また、「5%以上の体重減少を達成した試験参加者の割合」は、プラセボ群の20.0%に対してチルゼパチド10mg群94.4%、チルゼパチド15mg群96.1%となり、両群ともにプラセボ群に対する優越性が示された。
さらに、副次評価項目として、72週時の体重がベースラインから7%以上減、10%以上減、15%以上減、20%以上減、とそれぞれの達成率を比較したところ、いずれの評価項目においてもチルゼパチド両群で、プラセボ群に対する優越性が示された。
なお、日本でのゼップバウンドの提供については、マンジャロ同様、田辺三菱製薬が流通・販売を行い、日本イーライリリーと田辺三菱製薬が共同で情報提供活動を行うとしている。
「肥満症は、QOL(生活の質)の低下だけでなく、さらに他の健康障害を引き起こすリスクや、すでに患っている他の疾患を悪化させるリスクがあります。それにもかかわらず、これまでは治療選択肢が限られていたこともあり、他の慢性疾患と同じレベルの必要な診断や治療がなされてこなかった現状があります。ゼップバウンドを通じて、肥満症のある方がエビデンスにもとづく最適な治療を享受し、より充実した生活をおくることができるよう取り組んでまいります」と、日本イーライリリーでは述べている。
「肥満には、遺伝的、身体的、心理的、社会的など複合的な要因があり、生活習慣だけが原因ではないにもかかわらず、肥満に対するスティグマ(偏見)が社会課題として存在しています。ゼップバウンドという新しい治療選択肢の登場をきっかけに、慢性疾患である肥満症が正しく理解され、肥満症のある人がより良い生活を送ることができるよう、貢献できることを期待しています」と、田辺三菱製薬では述べている。