米国糖尿病学会(ADA)が「糖尿病診療ガイドライン2025」を発表　最新のエビデンスを追加

糖尿病治療に関する包括的かつエビデンスにもとづく推奨事項と実践のためのガイダンス

　米国糖尿病学会(ADA)が発表した「Standards of Care in Diabetes—2025」は、若年者・成人・高齢者の糖尿病の診断と治療の戦略、2型糖尿病と肥満症などに関連する合併症を予防あるいは遅らせる方法、健康アウトカムを向上させるための治療の推奨事項などが含まれている。

　「ADAの最新のガイドラインは、医療従事者が糖尿病患者にできるかぎり最善のケアを提供できるようにするため、糖尿病治療に関する包括的かつエビデンスにもとづく推奨事項と実践のためのガイダンスを組み合わせて作成してある」と、ハーバード大学医学部およびジョスリン糖尿病センターのNuha El Sayed氏は言う。

　「米国の糖尿病患者の多くは、病院から診療所までプライマリケア環境でケアを受けているが、全国的に糖尿病患者の血糖と血圧などの管理は悪化している。血糖値やコレステロール値などの目標を達成できていない多くの患者の健康状態を改善し、増加している糖尿病患者のための複雑なケアを向上させることが求められている」としている。

　糖尿病ガイドライン2025の主な更新内容は次の通り――。

•  インスリン以外の血糖降下薬を使用している2型糖尿病の成人に対する持続血糖モニター(CGM)の使用の検討について補足。
•  GLP-1受容体作動薬の使用についてのガイダンスを追加。体重減少に加えて心腎保護にも着目している。
•  減量の目標達成後も良好な体重管理を維持するための薬物療法についてガイダンス。
•  肝線維化をともなう中等度あるいは進行した代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の治療に関するガイダンス。米国で代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の治療薬として承認された甲状腺ホルモン受容体β作動薬についても追加。
•  1型糖尿病の発症前の抗体ベースのスクリーニングの実施について補足。1型糖尿病の家族歴あるいは既知の遺伝的リスクがある患者が対象。
•  栄養の質、総カロリー、代謝改善を念頭においた、植物性タンパク質や食物繊維も取り入れた、エビデンスにもとづく食事指導。
•  食事のエネルギーと炭水化物の摂取量を調整するため、とくに高エネルギーの甘い清涼飲料や超加工食品の摂取量を減らすための食事指導について補足。
•  外来および入院患者の糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)および高浸透圧性高血糖状態(HHS)に対する対処ついて追加。
•  糖尿病患者の低血糖、糖尿病による苦痛(diabetes distress)、不安に対処するためのスクリーニングの最新情報を追加。
•  高齢者に提供する糖尿病ケアとアプローチの改善について補足。
•  1型糖尿病および糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のリスクがある他のタイプの糖尿病患者に対する医療用大麻の使用に関するガイダンス。
•  肥満症のある患者の体重管理のための薬物療法および外科療法について、およびレジスタンス運動の必要性について追加。
•  妊娠中の潜在的に有害な薬剤の使用についての最新情報と、ケアプランを適切に提供するためのガイダンス。
•  周術期ケアでのGLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の使用に関するガイダンス。
•  医薬品の不足や医薬品を入手できない患者のとるべき行動についてのガイダンス。 

　「Standards of Care in Diabetes—2025」は、「Diabetes Care」2025年1月号の付録としてオンラインで閲覧可能で、iOSおよびAndroidシステムで利用できるアプリも、最新のガイドラインをインタラクティブな表、アルゴリズムなどとともに提供されている。

　ガイドラインの策定委員会には、医師に加えて、看護師、療養指導士、教育スペシャリスト、管理栄養士、薬剤師、政策立案者など、さまざまな専門的背景をもつ専門職も参加しており、米国心臓病学会(ACC)、米国老年医学会(AGS)、米国骨代謝学会(ASBMR)、米国肥満学会(TOS)から承認を得ているとしている。

The American Diabetes Association Releases Standards of Care in Diabetes—2025 (米国糖尿病学会 2024年12月9日)
Standards of Care in Diabetes—2025 (Diabetes Care 2025年1月)
The American Diabetes Association Calls for Primary Care Policy Changes to Improve Diabetes Outcomes (米国糖尿病学会 2024年11月26日)
Diabetes Management: A Case Study to Drive National Policy Change in Primary Care Settings (Annals of Family Medicine 2024年11月)