糖尿病性足潰瘍は経皮水分蒸散量(TEWL)が高値であると再発リスクが高い

米食品医薬品局(FDA)は、創傷表面が皮膚で完全に覆われ分泌物や排液を2週間連続して認めない状態を、創傷治癒と定義している。しかしDFUの場合はこの定義を満たしても再発しやすいことが知られており、DFUの再発は下肢切断や死亡のリスク上昇と関連している。
DFU再発の一因として、皮膚バリア機能の不完全性の関与が考えられており、皮膚バリア機能が低い場合、TEWLが高値となることが報告されている。TEWLは携帯型の機器を用いたポイントオブケア検査(POCT)でも計測でき、DFUの治癒判定後にTEWLを迅速測定することにより再発リスクを予測できる可能性が想定される。
この仮説の下、K.Sen氏らは、米国内7施設が参加する多施設共同非介入試験による検証を行った。この研究の参加者は、DFU治療を受けた1型・2型糖尿病患者418人。TEWLは創傷閉鎖部位で測定するとともに、健足の解剖学的に一致する部位でも測定した。
この測定を創傷閉鎖の2週間以内に1回、その2週間後の閉鎖確認時点で1回、計2回実施し、最大16週間にわたり再発の有無を追跡した。なお、DFU再発は医師の診断のほかに、患者自身からの申告を記録し、両者の乖離を検討した。
再発の有無を追跡し得た患者は368人であり、このうち79人(21.5%)に再発が認められた。初回のTEWL測定値は、再発を認めた患者の方が有意に高値だった[P=0.006]。
TEWL30g/m²/時をカットオフ値として二分すると、低TEWL群での再発率は17%であったのに対して、高TEWL群では35%であり、オッズ比 2.66[95%信頼区間 1.57~4.49]で、高TEWL群での再発が有意に多いことが分かった[P<0.001]。
また高TEWL群では、再発までの期間が短いことも明らかになった。なお、医師の判定結果と患者の自己申告はほぼ一致していた。
論文共著者の1人である、米国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所のTeresa Jones氏は、「われわれの研究は、DFU再発リスクの評価に利用可能な信頼性の高い、はじめてのツールを臨床医に提案するための重要な第一歩である」と総括。
また、「DFUは糖尿病における非常に複雑な問題であり、TEWLを利用して再発リスクが高い潰瘍を特定できれば、多くの患者の救肢、および死亡リスク抑制につなげられるのではないか」と今後の展望を語っている。
[HealthDay News 2025年6月3日]
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