低出生体重の人が成人すると糖尿病リスクが1.53倍に上昇 日本の成人11万人を調査 JPHC-NEXT

2024.05.15
 出生体重が低かった人が成人になると、心血管疾患、高血圧、糖尿病の有病率が上昇する傾向があることが、日本の40~74歳の成人約11万人を対象に保健所ベースで実施された次世代多目的コホート研究「JPHC-NEXT」で明らかになった。

 成人してからの糖尿病発症のリスクは、出生体重が1.5kg未満のグループでは3.0~3.9kgのグループに比べて、1.53倍に上昇した。

 妊娠中の低栄養から生じる代謝ストレスが引き金となり、胎児にエピジェネティックな変化、レプチンの低下、ネフロン数の減少、インスリンシグナル経路の変化などを引き起こすことなどが一因と考えられる。

日本人の大規模集団を対象に低出生体重の影響を調査

 出生体重が低かった人が成人になると、心血管疾患、高血圧、糖尿病の有病率が上昇する傾向があることが、日本の40~74歳の成人約11万人を対象に保健所ベースで実施された次世代多目的コホート研究「JPHC-NEXT」で明らかになった。研究成果は、「Journal of Epidemiology」に掲載された。

 日本では、1980年~2000年に低出生体重児の割合が約2倍に増加し、1980年以降に出生した世代が成人期後半を迎えるにあたり、生活習慣病の発症が増加することが懸念されている。

 低出生体重は、生活習慣病、とくに心血管疾患・高血圧・糖尿病のリスク因子になることが海外の疫学研究では報告されているが、日本人の大規模集団を対象とした研究はこれまで行われていなかった。

 そこで、国立がん研究センターなどの研究グループは、日本に在住している成人期後期(40~74歳)の男女11万4,105人を対象に、出生体重と、心血管疾患を含む5つの生活習慣病の既往歴との関連を調べた。出生体重と成人期後期の生活習慣病との関連の報は日本でははじめて。

 ベースライン調査で実施したアンケートで把握した出生体重によって、対象者を5つのグループ(1.5kg未満、1.5~2.4kg、2.5~2.9kg、3.0~3.9kg、4.0kg以上)に分け、心血管疾患、高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風の5つの生活習慣病の既往歴との関連を調べた。

出生体重が低かった人が成人すると糖尿病の既往歴が1.53倍に上昇

 その結果、出生体重が低いことは、心血管疾患・高血圧・糖尿病の既往歴と有意に関連していることが示された。

 出生体重が1.5kg未満のグループでは、3.0~3.9kgのグループに比べて、心血管疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)を経験したことがある割合は1.76倍[aPR 1.76、95%CI 1.37-2.26]、高血圧は1.29倍[aPR 1.29、95%CI 1.17~1.42]になった。

 糖尿病についても、出生体重が1.5kg未満のグループでは、1.53倍[aPR 1.53、95%CI 1.26~1.86]に上昇した。

 なお、出生体重が低いことと、高脂血症の既往歴のあいだには弱い関連がみられたが、痛風とのあいだには関連はみられなかった。

出生体重が1.5kg未満のグループは成人してから糖尿病の既往が増加

出典:国立がん研究センター、2024年

胎児期の環境因子は成人期の生活習慣病のリスクにつながる

 「今回の研究では、出生体重3〜3.9kgの方を基準にすると、心血管疾患は1.5~2.5kgの方は1.25倍(95%CI 1.12~1.39)、1.5kg未満の方は1.76倍(95%CI 1.37~2.26)となり、調整有病率比が高いことが示されました」と、研究者は述べている。

 「心血管疾患のリスク因子である高血圧、糖尿病についても、出生体重が少ない方の調整有病率比が高い結果にとなりました」。

 研究者によると、低出生体重は、早産や胎内での栄養不良といった環境を反映していると考えられる。つまり、研究は胎児期の環境因子が、成人期の生活習慣病のリスクになることを示している。

 「妊娠中の低栄養から生じる代謝ストレスが引き金となり、胎児にエピジェネティックな変化、レプチンの低下、ネフロン数の減少、インスリンシグナル経路の変化などを引き起こし、それが出生後の栄養過多(胎内と比較した相対的な過多も含む)と相まって、成人期の糖尿病・高血圧・心血管疾患を引き起こす一因となることが考えられます」としている。

 なお、今回の研究は、出生体重が含まれている成人コホートのデータを用いたため、サンプルサイズが大きいことが特徴となるが、研究で把握した出生体重は自己申告に基づくことを限界点として挙げている。ただし、自己申告による出生体重は実際の出生体重とよく相関するということは、別の研究でも示されている。

 また、今回の研究での出生体重と心血管疾患の関連は、回答者が生存していて、かつ調査に参加できるだけの健康を有する人に限られているため、選択バイアスがあることに注意が必要としている。

 さらに、「本研究の参加者は1937~1977年生まれの方々で、低出生体重児の増加が問題となっている最近の世代とは、低出生体重児となった原因が異なる可能性もあることに留意しなければなりません。今後は、より最近の世代を対象とした研究が必須と考えられます」と、研究者は述べている。

次世代多目的コホート研究「JPHC-NEXT」
Association between birth weight and prevalence of cardiovascular disease and other lifestyle-related diseases among Japanese population: JPHC-NEXT Study (Journal of Epidemiology 2023年11月)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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