糖尿病患者の腎症リスクにBMIが関連 とくに女性で肥満は高リスク 日本人15.8万人のデータを解析

2022.03.10
BMIが女性糖尿病患者の腎症リスクに強く関連

 2型糖尿病患者の腎症リスク抑制には体重管理が重要であることが、メンデルランダム化解析による研究結果として示された。とくに女性において、BMI高値であることと腎症リスクとの強い関連が認められるという。東南大学(中国)のJingru Lu氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に2月22日掲載された。

 2型糖尿病患者における肥満と糖尿病性腎症との関連については、観察研究では結論に一貫性を欠いており、因果関係には不明点が多い。これを背景としてLu氏らは、日本人の疾患データベースである「バイオバンク・ジャパン」のデータを用いたメンデルランダム化(MR)解析を実施した。

 MR解析は遺伝子多型を用いて対象をランダム化し、リスク因子への曝露とアウトカムの関連の因果効果を推論する手法のこと。コホート研究での多変量解析における交絡因子の調整では、未知の因子や未測定の因子を調整不能であり、結果に残余交絡の影響が生じる可能性を否定できない。それに対して、MR解析ではいくつかの前提条件を満たせば、そのような残余交絡が存在しても因果効果の推測が可能。

 Lu氏らは、バイオバンク・ジャパンの登録者15万8,284人のデータをもとに、BMIの操作変数として56の遺伝子多型を特定。2型糖尿病患者3,972人を対象として、糖尿病性腎症の存在、eGFR低値、およびタンパク尿を認めることと、BMIとの因果効果を検討した。また、性別で層別化した検討も行った。

 MR解析の結果、BMIが1標準偏差高いごとに、糖尿病性腎症の存在が多くなり〔オッズ比(OR)3.76(95%信頼区間1.88~7.53)、P<0.001〕、eGFRが低値となる〔OR0.71(同0.59~0.86)、P<0.001〕という因果効果の存在が示唆された。タンパク尿の出現との有意な関連は認められなかった(P=0.22)。性別の解析からは、糖尿病性腎症に対するBMIの因果効果は、男性〔OR3.48(同1.18~10.27)、P=0.02〕よりも、女性〔OR14.81(同2.67~82.05)、P=0.002〕でより強く認められた。なお、感度分析により、MR解析の仮定が妥当であることが確認された。

 著者らは、「われわれの研究結果は、2型糖尿病患者、とくに女性患者において、糖尿病性腎症の発症や進行に肥満が強く関与することを示している」と結論付けている。また、考察として、「血糖管理と血圧管理を徹底するだけでは、2型糖尿病患者の末期腎不全への進行を抑制できない可能性があり、体重管理が重要であることが確認された」と述べている。

[HealthDay News 2021年2月28日]

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