【新型コロナ】医療機関の受診控えにより、がん発見が大幅減少 胃がんでは男性11.3%、女性12.5%減少
医療機関の受診控えにより、がん発見が大幅に減少
国立がん研究センターは「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2020年全国集計報告書」を公表した。新型コロナの拡大の影響を受け、国民の検診の受診控え、医療機関の受診控えにより、がん発見が大幅に減少し、たとえば胃がんでは男性11.3%、女性12.5%、それぞれ減少したことが明らかになった。大腸がんでも、男性6.8%、女性5.5%、それぞれ減少した。
「院内がん登録」は、病院で診断・治療を受けたすべての患者のがんについての情報を登録する仕組み。この調査により、病院で診断されたり、治療されたりしたすべての患者のがんについての情報を、診療科を問わず病院全体で集め、その病院のがん診療がどのように行われているかが明らかになる。
この調査により、がん検診で見つかった患者に含め、他の病気でかかっているうちに発見された患者なども分かる。国立がん研究センターでは、がん診療連携拠点病院などで行われる情報を集めて、全国レベルや都道府県レベルでどのような特徴があるかを公表している。
2020年の報告では、新型コロナの拡大下でのがん診療の状況について、がん診療連携拠点病院を含む863施設の104万379例のデータを用いて、集計をまとめた。これは、新規のがんの72.5%をカバーしている。
その結果、前年と比べると、594施設で全登録数(新規にがんの診断や治療を受けた例)が減少し、平均で4.6%減(6万409件)となった。うち肝臓がんは男女ともほぼ横ばいであるのに対し、とくに男性で胃がん・大腸がん、女性で乳がん・胃がんの登録数がそれぞれ減少した。
2016~2020年の院内がん登録全国集計すべてに参加した735施設を対象に、診断月、発見経緯、病期などについて2016~2019年の4年平均と2020年を比べたところ、2020年は98.6%(前年比較は94.1%)と減少した。
診断月別では、緊急事態宣言が発出されていた5月に登録数の減少がみられ、がん検診発見例、検診以外の発見例ともに減少がみられた。
がん・病期別では、2018・2019年の2年平均に比べ、2020年診断例の大腸がん0期91.2%、IV期99.6%とやや減少していた。月別にみると5月にいずれの病期も減少し、6月以降の登録数は回復する傾向がみられた。
2019年登録数との比較 がん診療連携拠点病院の5大がんの全登録数の推移[性別]
2020年5月は大腸がん0期の登録は35.3%減少
2020年の全登録数と4年平均を比べたところ、その割合は1.4%(1万4,046件)減少した。前年比較でも5.9%(6万661件)減少した。他施設診断・自施設初回治療開始例の同割合は1.5%(2,680件)減少し、前年比較でも6.2%(1万2,026件)減少と、といずれも同程度の減少がみられた。
発見経緯別にみると、2020年胃がんの登録数7万6,756件のうち、自覚症状などによる診断例が6万2,604例であり、4年平均と比較すると7,769件(11.0%)減少した。
また、がん検診などの発見例は1万4,152例で、4年平均と比較すると24.3%(4,538件)の減少となった。減少幅は件数では検診以外の発見例で多く、比率では検診発見例で大きかった。いずれも緊急事態宣言が発出されていた5月の減少が大きかったが、その後回復傾向となった。
がん種・病期別に2年平均と比較すると、たとえば大腸がん0期が9.8%(3,003件)減少、IV期が0.4%(73件)減少となった。月別にみると、5月0期は35.3%減少し、IV期18.3%減少した。
国立がん研究センターでは「検診発見例、自覚症状などによる発見例の登録数がともに減少していることから、一定の受診控えが生じた可能性が考えられる。適切なタイミングで適宜医療機関を受診できるようにすることが重要」と強調している。
国立がん研究センター
国立がん研究センターがん対策研究所「がん情報サービス がん統計」報告書