高齢者糖尿病の認知症リスクを下げるHbA1c目標値は8%未満が適正 米国の中高年患者で検討
認知症リスクはHbA1c値が6%以上8%未満に管理されていると低下
研究は、オーストラリアの国立健康老化センターやモナシュ大学などによるもの。研究成果は、「JAMA Neurology」に2023年4月17日にオンライン掲載された。
研究グループは、カイザーパーマネンテ北カリフォルニア統合医療システムに登録された、50歳以上の2型糖尿病患者25万3,211例(平均年齢61.5歳、男性53.1%)の2020年2月~2023年1月のデータを解析。
追跡期間の平均は5.9年。期間中のHbA1c測定が2回未満の患者、ベースライン時に認知症と判定された患者、追跡期間が3年未満の患者は除外した。
HbA1cのカテゴリーを(1) 6%未満、(2) 6%以上7%未満、(3) 7%以上8%未満、(4) 8%以上9%未満、(5) 9%以上10%未満、(3) 10%以上の6通りに分け比較した。
その結果、HbA1c値が6%以上8%未満に管理されていた患者では、認知症リスクの低下とのあいだに有意な関連が示された。
HbA1c値が9%未満の患者に比べた認知症リスクの調整ハザード比(aHR)は、HbA1c値が9%~10%未満の患者で1.31(95%CI 1.15~1.51)、HbA1c値が10%超の患者で1.74(95%CI 1.62~1.86)になった。
一方、HbA1c値が7%~8%未満の患者でaHRは0.93(95%CI 0.89~0.97)に、6%~7%未満の患者で0.79(95%CI 0.77~0.81)に、6%未満の患者で0.92(95%CI 0.88~0.97)になった。
なお研究グループは、認知症の診断を国際疾病分類第9改訂コードを使用して行い、年齢、人種、民族、ベースラインの健康状態、HbA1c測定回数などを調整して、時間変化する血糖管理と認知症との関連を、コックス比例ハザード回帰モデルにより推定した。
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標は適正
研究は、オーストラリアの国立健康老化センターやモナシュ大学 保健予防医学部のChris Moran准教授らによるもの。
米国老年医学会 (AGS)では、高齢者糖尿病の血糖コントロール目標は、低血糖などの薬物有害事象やポリファーマシーの防止の観点から、HbA1c 7.5%未満~8%未満としており、複数の併存疾患がある、健康状態が悪い、余命が限られているといった背景のある高齢者に対しては、8%~9%のより緩い目標が推奨されている。
「累積HbA1c値が9%以上の成人で認知症リスクは上昇した。これらの結果は、2型糖尿病の高齢者に対して現在推奨されている緩やかな血糖コントロール目標が適正であることを支持するものだ」と、Moran准教授は述べている。
なお、「因果関係および他の集団にも当てはめられるかどうかを検討するため、さらなる研究が必要だ」と付け加えている。