医療用モバイルアプリを客観的に評価できるスケールの日本語版を開発 アプリの研究・開発・選択の基準に
医療用アプリは増えているが、内容や質は玉石混交
世界的なデジタル化の流れや新型コロナ拡大による暮らしや働き方の変化により、医療用アプリの数はますます増えている。その一方で、その内容や質は玉石混交であり、場合によっては健康被害をもたらす可能性も指摘されており、トレーニングを受けた評価者による質的評価を行うツール開発が待たれている。
そうした状況で、国際的な医療用アプリの客観的質的評価ツールとして「モバイルアプリ評価スケール(MARS)」が広く使われるようになっている。MARSは、2016年にクイーンズランド工科大学によって開発されたスケールで、4つの客観的評価項目(エンゲージメント、機能性、見た目・デザイン性、情報)と1つの主観的評価項目の合計23問で医療用アプリの評価を行う。
そこで京都大学などは、MARSの日本語版を開発し、その信頼性と妥当性を検証した。
研究では、原版の開発者の協力のもとCross-cultural approach(文化横断手法)という方法を用いて、使われる国の文化の違いなども考慮に入れ、疫学・医学・心理学・社会学・システム開発・医学翻訳の専門家からなるグループにより、日本語版を開発した。
アプリ選択の際に参考になる客観的な質的評価を提供
研究グループは、現在市場で公開されているメンタルヘルス分野のアプリ60個を、開発した日本語版評価スケールを用いて実際に評価し、その信頼性および妥当性を検証し、原版と同等であることを確認した。
また、現在一般的に参照されているアプリストアでの使用者による星評価が、MARSの客観的評価項目に比べ相関が認められない一方で、MARSの客観的評価項目と主観的評価項目が高い相関を示すことも確認した。これは、MARSにより正確にアプリの評価が行える可能性を示唆している。
同ツールにより、さまざまな医療アプリの研究やアプリ開発でのアセスメントのみならず、アプリ選択の際に客観的な質的評価を参照することが可能となるとしている。今後は、今回の研究に参加した原版の開発者と、引き続き評価スケールの改訂版などに取り組む予定。
研究は、京都大学大学院医学研究科健康増進行動学教室の山本一道客員研究員、坂田昌嗣同助教、古川壽亮同教授らの研究グループが、クイーンズランド工科大学、東京大学と共同で国際研究として行ったもの。
京都大学大学院医学研究科健康増進行動学教室
Japanese Version of the Mobile App Rating Scale (MARS): Development and Validation (Journal of Medical Internet Research mHealth and uHealth 2022年4月14日)