【新型コロナ】⼊院・療養中の感染患者に嗅覚障害と味覚障害が 57%に嗅覚障害、40%に味覚障害
病院やホテルに療養中のCOVID-19患者の57%に嗅覚障害が、40%に味覚障害が認められた。全体の37%は嗅覚・味覚の両方の障害がみられた。
COVID-19の治癒にともない、嗅覚障害と味覚障害は早急に消失することも示された。
新型コロナ感染で嗅覚障害・味覚障害が発生
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、発症早期に嗅覚、味覚障害が発生することが知られているが、日本での発生頻度と予後は十分に知られていない。
そこで研究グループは、日本でのCOVID-19による嗅覚障害、味覚障害の発生頻度や特徴を把握し、どの程度の期間症状が持続するかや、その予後を把握することを目的に、2021年2~5月に、20~59歳までの病院やホテルに療養中のCOVID-19患者を対象に調査を行った。
症状に関するアンケートと嗅覚、味覚検査を患者自身に実施してもらい、インターネットで回答を得た。アンケート回答者に、発症1ヵ月後に電子メールで2回目の回答と嗅覚、味覚検査実施の依頼を送付した。入院やホテル療養中の回答者は251人、そのうち検査実施者は119人だった。
研究は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の村上信五理事長や、金沢医科大学医学部耳鼻咽喉科学の三輪高喜教授らによるもの。
57%に嗅覚障害を、40%に味覚障害 37%は嗅覚・味覚の両方の障害が
アンケート結果(⼊院・療養中)
その結果、57%に嗅覚障害が、40%に味覚障害が認められた。全体の37%は嗅覚・味覚の両方の障害がみられ、味覚障害のみがみられたのは4%と少なかった。
また、「嗅覚障害あり」と回答した患者の多くが、嗅覚検査でも低値を示したのに対し、「味覚障害あり」と回答した患者の多くは、味覚検査では正常を示した。このことから、味覚障害を訴える患者の多くは風味障害である可能性が高いことが示された。
嗅覚障害、味覚障害ともに女性に頻度が高く、加齢とともに頻度は減少した。嗅覚障害と味覚障害の発生は、鼻づまり、鼻水、くしゃみ、鼻の痛みと正の相関を示した。
障害の程度としては、嗅覚障害では59%が、味覚障害では37%が、それぞれ「まったくしない」と回答したが、速やかに回復する症例もみられた。
異嗅症は20%に、異味性は39%にみられた。障害によるQOL(生活の質)への影響は、「飲食が楽しめなくなった」など食に関することで、嗅覚障害や味覚障害と強い相関が示された。
調査時に、嗅覚障害、味覚障害ありと回答した患者のうち、それぞれ60%、84%が1ヵ月後の調査で改善を示した。この結果は海外の報告とほぼ一致し、嗅覚障害、味覚障害はコロナウイルス感染症の治癒にともない、多くの人で早急に消失するものと考えられる。
研究結果は、厚生労働科学特別研究事業により行われ、厚生労働省アドバイザリーボードから公開された。
研究グループは、「今後、引き続き、3ヵ月後、6ヵ月後の改善率を、本研究とは別にアンケートシステムで引き続き追跡するとともに、後遺障害に対する治療方法を検討し、⽇本⽿⿐咽喉科学会でも報告する予定」としている。
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
金沢医科大学医学部耳鼻咽喉科学