SGLT2阻害薬が糖尿病患者の腎臓の酸欠状態を防ぎ腎臓を守る可能性 SGLT2阻害薬の腎保護作用を評価 大阪公立大学など
SGLT2阻害薬が2型糖尿病患者の腎臓の酸素状態を改善
非侵襲的に酸素濃度を計測できるBOLD MRIを用いて腎臓の酸素量を可視化
大阪公立大学と埼玉医科大学は、SGLT2阻害薬の作用機序を調べるために腎臓の酸素量に着目。2型糖尿病患者14人にSGLT2阻害薬を5日間投与し、投与から1日目と5日目の腎臓の酸素量を、BOLD MRIを用いて調べた。
その結果、投与前に比べて酸素量が向上したことから、SGLT2阻害薬は腎臓の酸素状態を改善し、腎臓を保護する可能性が示された。
BOLD MRI(Blood oxygenation level-dependent MRI)は、機能的MRIのひとつで、酸素化が改善すると酸化型Hbが増加しT2*値が上昇するのを利用し、組織・臓器の酸素化を評価する手法。ヘモグロビン(Hb)には酸素が結合した酸化型Hbと還元型Hbがあり、両者には磁化率の違いがあるため、MR信号(とくにT2*)に差が生じるBOLD効果を利用する。
腎臓の赤い方が酸素量が多く、青い方が酸素量が少ないことを示す
日本では、透析治療を受けている患者は35万人に上り、医療費は年間約1.6兆円と総医療費の約4%を占める。糖尿病による腎臓病(糖尿病関連腎臓病)が、透析の原因疾患の第1位になっており、近年、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が、血糖値改善作用を上回る透析予防効果を発揮すると注目されている。しかし、その作用機序には不明な部分も多く、その解明が求められている。
研究は、大阪公立大学大学院医学研究科腎臓病態内科学の森克仁准教授と埼玉医科大学医学部腎臓内科の井上勉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Endocrinology」にオンライン掲載された。
「ヒトで腎臓の酸素量を評価することは極めて困難でしたが、今回、まだ世界でも限られた施設でしか評価できないBOLD MRIを用いて、SGLT2阻害薬の酸素化改善、腎保護の機序の一端を示すことができました。今後、BOLD MRIにより腎臓病の診断、治療が大きく発展する可能性があります」と、森准教授は述べている。
大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学・腎臓病態内科学
Effects of canagliflozin on kidney oxygenation evaluated using blood oxygenation level-dependent MRI in patients with type 2 diabetes (Frontiers in Endocrinology 2024年8月30日)