特定健診・保健指導の効果を10年間のNDBで検証 体重や血糖値が減少し一定の効果 ただし体重減少は5年後には減弱
特定保健指導に一定の効果 体重や血糖値が減少 課題もあり
厚労省がまとめた「特定健診・保健指導の効果的な実施方法に関する調査研究に係る報告書」で、健診後の保健指導により体重や血糖値を減少させた人が多く、男性の積極的支援対象者で有意なLDLコレステロール低下が認められたなど、一定の効果はみられるものの、全般に血圧やコレステロールを改善させる効果は確認されず、課題もあることが明らかになった。
特定健診・保健指導制度は、一般住民(40歳以上75歳未満)を対象に生活習慣病(肥満、高血圧、高血糖、脂質異常など)のスクリーニングを行い、生活指導介入(特定保健指導)により健康アウトカム改善を目指す事業。
一方、NDB(ナショナルデータベース)は、厚生労働省が構築したレセプト情報や特定健診などの情報のデータベース。ワーキンググループは、NDBに含まれる2008~2018年の特定健診・特定保健指導データを用いて、特定保健指導が健康アウトカムに与える影響を検討した。
対象となったのは、2008~2018年に2回以上の健診を受診した39~75歳の約4,400万人。初回健診受診時での、3年および5年後までの健診結果(体重、収縮期血圧、HbA1c、LDLコレステロール)に、特定保健指導が与える影響を、回帰不連続デザインで推定した。
【保健指導の割付効果 主な結果】
割付効果 | |
体重 | 男性:-0.09kg (-0.10kg to -0.06kg) 女性:-0.14kg (-0.17kg to -0.09kg) |
HbA1c | 男性:-0.004% (-0.006% to -0.001%) 女性:-0.01% (-0.02% to -0.01%) |
実施効果 | |
体重 | 男性:-0.87kg (-0.96kg to -0.61kg) 女性:-1.04kg (-1.33 to -0.66) |
HbA1c | 男性:-0.03% (-0.06% to -0.01%) 女性:-0.07% (-0.12% to -0.04%) |
収縮期血圧、LDLコレステロールとの関連は認めなかった。男女で効果量に大きな違いは認められなかった。 ただし、ベースラインでの収縮期血圧が140mmHg以上の女性では、割付効果:-0.77mmHg、実施効果:-4.04mmHgと、収縮期血圧の低下を認められた。
体重減少への効果は、5年アウトカムで3年アウトカムに比べて、減弱していた。女性では収縮期血圧の低下(割付効果:-0.35mmHg、実施効果:-2.46mmHg)とHbA1cの低下(割付効果:-0.01%、実施効果:-0.10%)が認められた。男性では収縮期血圧が軽度上昇していた。
【保健指導の割付効果 副次的な結果】
- 解析対象者の中で腹囲が基準値を超えたのは女性10.5%、男性42.0%だった。
- 腹囲基準周辺の対象者は、収縮期血圧の中央値は124mmHg(男女とも同値)、HbA1cの中央値は5.5%(男性)、5.6%(女性)、LDLコレステロールの中央値は128mg/dL(男性)、135mg/dL(女性)だった。
- 腹囲基準以上で、保健指導への割付割合、実施割合が高値だった。腹囲基準以上の者での保健指導実施割合は10~11%程度。保健指導実施者で、腹囲基準周辺(基準±5cm)に51.8%が分布していた。
- 性別・指導レベル別(動機づけ・積極的支援)のサブグループ解析では、積極的支援集団で体重減少の点推定値が大きい傾向があるが、サブグループ間で明らかな違いが認められなかった。男性の積極的支援対象者で、有意なLDLコレステロール低下が認められた。
今回の調査は、特定健診データ内に含まれる検査値の変化をアウトカムに設定し分析が行われたが、「特定保健指導と生活習慣病や心血管病の発症予防との関連については、引き続き分析を追加していく必要がある」と、ワーキンググループは指摘している。
「その際、特定健診後の介入として特定保健指導だけではなく、医療機関受診による服薬開始などの影響もふまえ、より多面的な評価を今後実施する必要がある」としている。
特定健診・特定保健指導について(厚生労働省)
保険者による健診・保健指導等に関する検討会(厚生労働省)
NDBオープンデータ 分析サイト(厚生労働省)
特定保健指導等の効果的な実施方法の検証のためのワーキンググループ(厚生労働省)