【新型コロナ】コロナ禍で糖尿病の処方にも変化が どの疾患が入院・外来件数がもっとも減少したか?
コロナ禍で多くの疾患の診療で、広い範囲で影響が出ている2020年5月に入院は27%、外来は22%減少
コロナ禍が他疾患への診療に与えた影響が甚大であることは、世界中から報告されている。世界各国で入院や外来件数の著減がみられ、肺炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患や、急性心筋梗塞、脳卒中、心不全などの循環器疾患の件数が減少したことが報告されている。
海外では、がんの診断の遅れのみならず、すでに診断されたがんの治療の遅れが報告されており、2型糖尿病などの慢性疾患についても、診断や治療の遅れが報告されている。
これらの影響の原因としては、感染対策や行動変容による罹患数の減少、患者側の受診控え、医療機関側の逼迫による受け入れ困難や、相対的に緊急性の低い検査・治療の延期など、複合的な要因が考えられるが、その詳細は明らかになっていない。
研究グループは、MDV社の診療データベースのうち、日本の匿名化された26の医療機関を2017年1月~2020年11月の間に受診した78万5,495人の患者を対象に、2020年の月別の入院、外来、処方、処置などの件数をコロナ禍前(2019年または2017~2019年の平均)と比較し、コロナ禍の他疾患の診療に対する影響を俯瞰的に評価した。
その結果、入院、外来ともにもっとも大きな減少がみられたのは2020年5月で、入院は27%、外来は22%減少しており、とくに小児科では入院65%、外来51%と大きな減少がみられた。
疾患別でみると、呼吸器疾患の入院がもっとも減少しており、16歳未満の肺炎(新型コロナウイルス肺炎を除く)は94%、16歳以上の肺炎は43%、気管支喘息は80%、それぞれ減少していた。
胆石症や狭心症などの入院については、予定外入院に比べて予定入院が大きく減少しており、相対的に緊急性の低い検査や治療が延期された可能性が考えられる。
内視鏡検査や外来リハビリも30%以上の減少がみられた。一方で、悪性新生物の入院は比較的影響が小さく、化学療法や透析治療についてはほとんど減少がみられなかった。
糖尿病などの慢性疾患の処方については、処方頻度の低下と1回あたりの処方日数の増加がみられた。
研究は、東京大学の山口聡子特任准教授、岡田啓特任助教、山内敏正教授、南学正臣教授、門脇孝名誉教授(虎の門病院院長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMJ Open」にオンライン掲載された。
「コロナ禍によって他疾患の診療も広い範囲にわたり影響を受けたことがわかりました。今後これらの影響をさらに詳細に調査することで、他疾患の診断や治療の遅れを防ぐことにつながると考えられます」と、研究グループでは述べている。
「今後、このような受診件数の減少の原因について詳しく調査を行い、コロナ禍の初期の受診件数の減少が長期的にどのような影響をもたらすのかを評価するとともに、2020年12月以降の影響についても評価していく予定です」としている。
なお研究は、令和2年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業「新型コロナウイルス感染症に対応した新しい生活様式による生活習慣の変化およびその健康影響の解明に向けた研究―生活習慣病の発症および重症化予防の観点から―」(JPMH20CA2046)の助成を受け、門田守人日本医学会連合会長のプロジェクトによって実施されたもの。
東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・生活習慣病予防講座
Impact of COVID-19 pandemic on healthcare service use for non-COVID-19 patients in Japan: retrospective cohort study (BMJ Open 2022年4月25日)