慢性腎臓病(CKD)の進行における心不全の重要性を実証
肥満や糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、および遺伝的素因が心不全やCKDのリスク上昇と関連のあることは、多くの疫学研究の結果として示されている。ただし、それらの因果関係については未解明の点が多く残されており、特に心不全が腎機能低下やCKDのリスクを押し上げるか否かは不明。Zhang氏らはこれらの点を明らかにするため、双方向2サンプルメンデルランダム化(2SMR)解析を行った。
2SMRには欧州で行われた2件の研究データを用いた。そのうち1件の研究では4万7,309人の心不全患者群と93万14人の対照群が設定され、他の1件は5万1,256人のCKD患者群と73万6,396人の対照群が設定されていた。解析には、逆分散加重(IVW)法、加重中央値推定(WME)法、MR-Egger法など、5種類の手法を用いて、結果の正確性や一般化可能性を高めた。
2SMR解析の結果、心不全の遺伝的素因をもつ人はCKDリスクが高いことが明らかになった。具体的には、IVW法ではオッズ比(OR)1.12(95%信頼区間1.03~1.21)であり(P=0.009)、WME法ではOR1.14(同1.03~1.26)であって(P=0.008)、いずれも有意な関連が確認された。この関連は糖尿病と高血圧の影響を調整した2SMR解析においても、IVW法ではOR1.13(1.03~1.23)、WME法ではOR1.15(1.04~1.27)であって、引き続き有意だった。なお、MR-Egger法では、糖尿病と高血圧の影響の調整前〔OR1.09(0.82~1.44)〕および調整後〔OR1.12(0.85~1.48)〕ともに非有意だった。
一方、CKDの結果としての心不全という、逆方向の因果関係に関する解析の結果は、IVW法ではOR1.01(0.97~1.06)、WME法ではOR1.03(0.97~1.10)であり、有意な関連が示されなかった。検討に用いた5種類の解析手法のうち、MR-Egger法のみが有意な関連を示していた〔OR1.13(1.01~1.26)〕。また、腎機能(eGFR)低下と心不全の関連については、5種類の解析手法の全てで有意な関連が示されなかった。
著者らは、「われわれの研究結果は、CKDの進行における心不全の重要性を実証するものであり、CKDの治療および新たな介入法の開発につながる有意義なものと言える。さまざまな集団で心不全とCKDの関連を検討し、その相互関係についてより深く理解して、かつ因果関係のメカニズムを解明することで、個別化医療の道が開けるのではないか」と述べている。
[HealthDay News 2023年12月19日]
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