1型糖尿病を幹細胞で根治 第1/2相試験を再開 再生した膵島細胞を移植 米Vertex
同種異系幹細胞由来の完全に分化したインスリン産生膵島細胞療法
VX-880は、Vertex社の独自技術により製造された、同種異系幹細胞由来の完全に分化したインスリン産生膵島細胞療法。VX-880は、無自覚性低血糖および重症低血糖のリスクの高い1型糖尿病患者を対象に評価されている。
VX-880は、グルコース応答性のインスリン産生により、膵島細胞機能を回復することで、血糖値を調節する能力を回復する効果を期待されている。VX-880は肝門脈への注入によって移植され、移植後は免疫抑制療法を維持し、移植した膵島細胞を免疫拒絶から保護する必要がある。
「この革新的な治療法は、ハーバード大学幹細胞研究所のダグラス メルトン教授らの研究室で生まれ、現在は臨床試験が進行中です」と、同社では述べている。
Vertex社は、2022年6月に開催された第82回米国糖尿病学会年次学術集会で、幹細胞由来で完全に分化した膵島細胞であるVX-880の第1/2相試験に関するデータを、2件の口頭発表と1件ポスター発表で示している。
#259-OR「1型糖尿病のための幹細胞由来で完全に分化した膵島細胞」では、VX‑880が1型糖尿病のインスリン産生と血糖コントロールの回復に有用であることを示した。さらに、#92‑OR「治療技術は進歩しているが、無自覚性低血糖、重症低血糖イベント、最適ではない血糖コントロールはなくなっていない」、口頭発表「血糖値モニタリングとセンシング」も実施した。
1型糖尿病の患者会である「T1D Exchange」の成人会員2,044人向けに、オンライン説明会も実施。CGM(持続血糖モニター)、インスリンポンプ、ハイブリッド クローズド ループ システムなど、1型糖尿病の治療は進歩しているにもかかわらず、無自覚性低血糖および重症低血糖イベントのリスクはなくならず、血糖コントロール目標を達成できていない患者は依然として多い現状を示した。
再生した膵島細胞の移植により低血糖を根本的に解決できる
VX-880の第1/2相臨床試験は、無自覚性低血糖、重症低血糖をともなう1型糖尿病患者を対象とした、多施設単群非盲検試験。同試験は、VX-880の安全性と有効性を評価するための連続した複数のパーツからなる臨床試験として設計されている。
第1/2相試験は17人の患者が登録されており、現在までに3人の1型糖尿病患者がVX-880の投与を受けた。試験のパートAでは、2人の患者が目標用量の半分の膵島細胞を移植された。パートBでは、3人目の患者が完全な目標用量の膵島細胞を移植された。パートCで追加患者に拡大する前に、目標用量による5人の患者の安全性と有効性を評価するとしている。同試験の登録は継続中としている。
同社によると、1型糖尿病のインスリン送達システムは進歩しているものの、1型糖尿病患者によっては血糖コントロール目標を達成して維持するのが難しい場合があるという。低血糖は依然として血糖コントロールでの重要な制限要因であり、重症低血糖は意識喪失、昏睡、発作、傷害を引き起こし、致命的となる可能性がある。現在の標準治療は低血糖の根本的な原因に対処しておらず、また1型糖尿病の管理のために、インスリン療法以外の選択肢は限られているとしている。
Vertex Pharmaceuticals Incorporated
A Safety, Tolerability, and Efficacy Study of VX-880 in Participants With Type 1 Diabetes(clinicaltrials.gov)