【新型コロナ】妊婦の感染は重症化しやすい? 妊婦のCOVID-19患者の疫学的・臨床的な特徴を解明
日本最大の新型コロナ関連のレジストリ「COVID-19 Registry Japan」のデータを解析
研究は、国立成育医療研究センター感染症科の庄司健介医長と国立国際医療研究センター国際感染症センター・AMR臨床リファレンスセンター応用疫学研究室の都築慎也医長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Infectious Diseases」に掲載された。
妊婦の新型コロナ感染・発症の特徴について、大規模に調査した研究は日本初では今回がはじめて。これまでの海外での検討では、妊婦の新型コロナは、非妊婦に比べ重症化しやすいかについて、重症化しやすいという報告と、変わらないという報告とがあり、はっきりとした答えは出ていなかった。また、妊婦の新型コロナの中で、どのような患者がより重症になりやすいのかについても情報が限られており、結論は出ていない。
そこで研究グループは、国立国際医療研究センターが中心となり運営されている日本最大の新型コロナ関連のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」のデータを解析した。
「妊婦と非妊婦の新型コロナの疫学的・臨床的な特徴の比較」「妊婦での新型コロナの中等症から重症に関連する要因を探索」という2つの目的について、後ろ向きの観察研究を行った。
研究は、2020年1月~2021年4月の期間中に3万7,138 人の患者情報が登録され、そのうち研究対象となったのは15歳以上~45歳未満の女性患者は4,006人だった。そのうち、妊婦は254人、非妊婦は3,752人だった。
これら対象患者の患者背景、重症度、治療内容などのデータを集計・分析。とくに、妊婦と非妊婦の患者背景を「傾向スコアマッチング解析」という手法を用いて揃えたうえで、重症度を比較した。また、妊婦患者を軽症群と、中等症から重症群に分け、多変量解析という手法で中等症から重症に関連する要因を探索した。
基礎疾患や妊娠中期により妊婦の重症化は増える
その結果、妊婦は非妊婦に比べ、家庭内での感染が多いことが判明した。妊婦の39.4%、非妊婦の19.8%が、家庭内での新型コロナの接触があるという結果になった。
また、集中治療室に入院した患者のうち、妊婦は2.4%(6人)、非妊婦は1.2%(45人)、死亡例は妊婦0.4%(1人)、非妊婦は0.1%(3人)だった。
妊婦と非妊婦の新型コロナの比較では、妊婦(187人)と非妊婦(935人)を比較した。その結果、中等症~重症の割合は、妊婦9.6%、非妊婦4.9%(P=0.0155)となり、「妊婦の方がより重症化している可能性」が示唆された。
妊婦がより重症化している可能性がある
妊婦の新型コロナ中等症~重症に関連する要因については、妊婦患者254人を、中等症~重症(30人)と軽症(224人)に分け、その背景を比較。
その結果、▼中等症~重症群の方が軽症群に比べて妊娠中期(14週〜)以降の患者の割合が高い(93.1% vs 71.2%)、▼なんらかの基礎疾患のある患者の割合が高い(16.7% vs 4.9%)」ということが明らかになった。
多変量解析でも、中等症~重症群と軽症群の比較とでは、妊娠中期以降のオッズ比(95%信頼区間)は5.295(1.215-23.069、P=0.026)、何らかの基礎疾患が存在する場合のオッズ比は3.871(1.201-12.477、P=0.023)と、それぞれ有意に中等症~重症と関連していることがわかった。
妊婦は家庭内での感染が多い
今回の研究により、日本の妊婦新型コロナの入院症例の実態が明らかにされた。今後、妊婦に対するワクチンを含む予防や治療について考えていくうえで、研究結果が重要な役割を果たすことが期待される。
「今回の研究はデルタ株やオミクロン株の流行が始まる前のデータであるため、今後デルタ株やオミクロン株などの変異株が妊婦に与えている影響を検討する際の比較対象としても貴重なデータであると考えられます」と、研究グループは述べている。
COVID-19 Registry Japan (COVIREGI-JP)
国立成育医療研究センター感染症科
国立国際医療研究センター国際感染症センター
Clinical characteristics and outcomes of COVID-19 in pregnant women: a propensity score matched analysis of the data from the COVID-19 Registry Japan (Clinical Infectious Diseases 2022年1月17日)