1型糖尿病患者は心血管イベントのリスクが低い 2型糖尿病患者と比較 1型の患者にとって朗報
1型糖尿病(T1DM)患者は2型糖尿病(T2DM)患者よりも、心血管(CV)イベントリスクが低いことを示唆するデータが報告された。米ベイステート医療センターのAndrew M. Goldsweig氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the Society for Cardiovascular Angiography & Interventions」に2月12日掲載された。

T1DMとT2DMはいずれもCVイベントのリスク因子と位置づけられているが、前者はインスリン分泌の絶対的欠乏によって発症するのに対して、後者はインスリン感受性の低下も関与する相対的インスリン作用不足によって発症するものであり、病態生理学的な差が大きいことから、CVイベントリスクが異なる可能性がある。ただし、その差異はいまだ十分に検討されていない。
これを背景としてGoldsweig氏らは、糖尿病と心血管代謝疾患のケアの向上を目的として構築されているレジストリ「VMR(Veradigm Metabolic Registry)」のデータを用いた解析を行った。
VMRは、米国心臓病学会(ACC)、米国内科学会(ACP)、米国糖尿病協会(ADA)などの協力により運営され、700以上の医療施設の患者150万人以上を長期的に追跡している。
本研究では、年齢が46~75歳で解析に必要なデータに欠落のない患者16万2,027人を抽出し、75万8,643回分の診療記録を解析した。
評価項目は、心筋梗塞、経皮的冠動脈形成術(PCI)、冠動脈バイパス術(CABG)、脳卒中、四肢虚血、末梢血行再建術などで構成されるCVイベントの有病率比(PR)とした。
患者数はT1DMが5,823人(3.59%)、T2DMが15万6,204人(95.41%)であり、平均年齢62.6±7.9歳、女性53.0%、BMI33.6±7.4、HbA1c中央値7.0%(四分位範囲 6.3~8.1)だった。
全体で合計1万1,096件のCVイベントが記録されていた。最も件数の多いイベントは脳卒中(45.3%)であり、次いで四肢虚血(19.5%)で、以下、CABG(17.5%)、心筋梗塞(9.3%)、PCI(3.8%)と続いた。
T2DMを基準とするT1DMの全CVイベントのPRは0.63[95%信頼区間 0.55~0.71]であり、後者の方が低かった。個々のイベントのPRを見ると、脳卒中 0.64[同 0.54~0.76]、四肢虚血 0.57[同 0.43~0.75]、心筋梗塞 0.56[同 0.41~0.75]、PCI 0.43[同 0.27~0.68]で、いずれもT1DMの方が低かった。CABG 0.83[同 0.64~1.06]と末梢血行再建術 0.71[同 0.40~1.26]については有意差がなかった。
各群の平均年齢はT1DMが59.4±8.3歳、T2DMが62.7±7.8歳と前者の方が若年だったが、年齢調整後もT1DMの全CVイベント有病率の方が有意に低かった[PR 0.66、同 0.58~0.74]。さらに、性別、BMI、HbA1c、血清クレアチニン、併存疾患、喫煙状況、および新型コロナウイルス感染症の影響を調整後も、引き続き有意差が維持されていた。
著者らは、「この研究結果はT1DM患者にとって朗報ではある。ただし、T1DM患者に発生するCVイベントの病態生理学的な知見自体がまだ少なく、その予防や治療に関するさらなる研究が必要とされる」と述べている。
なお、1人の著者がライフサイエンス関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。
[HealthDay News 2025年2月25日]
Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock