【新型コロナ】ステイホームで注目される「シックハウス症候群」 予防のために何が必要?

2021.08.03
 千葉大学は、住宅購入時の選択や生活スタイルなどの改善で、シックハウス症候群を予防できる可能性があることを明らかにした。
 シックハウス症候群を経験するリスクは、カーペットありの場合は1.48倍に、喘息の体質のある人は1.41倍に、それぞれ増えることが示された。
 予防するために、化学物質にさらされないようにしたり、適切な掃除を行うなどの生活スタイルの改善が重要だという。
 とくに小さな子供は症状を訴えられない場合もあり、周囲の大人が気を付ける必要がある。

コロナ禍でシックハウス症候群が注目されている

 新型コロナウイルス感染症の拡大が影響し、ステイホームやリモートワークが増え、多くの人が家で過ごす時間を増やしている。それにあわせて、家のあり方についての考えも大きく変わってきた。そこであらためて注目されているのが、シックハウス対策だ。

 室内には多くの汚染物質があり、それらを吸い込んだりすることで起こる、「鼻のムズムズ・鼻水」「頭痛」「のどの乾燥」「目のチカチカ」など、さまざまな健康障害の総称を「シックハウス症候群」という。

 症状の重さや頻度は人によって異なり、外気に触れることで症状が緩和することもあるため、そのまま過ごしてしまうケースが多くあり、アレルギー疾患増悪との関連を示す報告もされている。

 研究グループは、時代や社会環境の変化により、住環境や生活スタイル、働き方が大きく変わってきているなかで、それらの変化に合わせたリスク要因に関する調査を行う必要があると考えた。

 研究は、千葉大学予防医学センターの鈴木規道准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Building and Environment」に掲載された。

女性や若い人、アレルギー体質、喫煙・受動喫煙、カーペットは危険因子

 研究グループは、シックハウス症候群を予防する方法を明らかにするため、発生に関連する個人の要因や生活スタイルを調べ、予防改善策の提案を行うことを目的に調査を行った。

 全国の20~70歳の男性3,238人、女性1,758人、計4,996人を対象にWebサイトを使用した質問調査を実施し、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。

 その結果、シックハウス症候群を経験しやすい、以下の4つの要因が示唆された――。

(1)女性や若い人(60代と比べた場合、とくに20代)、(2)アレルギー既往歴がある人や、神経性が敏感な人、(3)喫煙歴がある人や、室内での喫煙、受動喫煙・副流煙を吸い込んでいる人、(4)床がカーペット敷き、ホコリを目にする部屋に居住している人。

 性別や年齢、疾患歴、神経性過敏、化学物質を低減した住宅仕様、ホコリの有無、喫煙歴、室内の喫煙などの影響を考慮しても、カーペットありの場合は、なしの場合に比べてシックハウス症候群を経験するリスクが約1.48倍増えることが示された。

 さらに、ぜんそくの疾患歴がある人は、年齢や性別などの影響を考慮しても、ない人に比べて約1.41倍、シックハウス症候群を経験しているということが判明した。

シックハウス症候群を予防するための何が必要?

 これらの結果から、極力、化学物質にさらされないようにすることや、生活スタイルの改善が重要であることが分かった。とくに、小さな子供は症状を訴えられない可能性もあり、原因にさらされないよう、周囲の大人が気を付ける必要がある。

 予防策として、症状を経験したことがある人はその家族も含め、▼室内での喫煙を行わない、▼カーペットの使用を控える、▼化学物質を低減した住宅の仕様を選択する、▼室内でのホコリを目にしないような適切な掃除を行うこと――などが必要であることが示された。

 生活スタイルや住宅購入時の選択を工夫することで、シックハウス症候群を予防できる可能性があるという。

 「本研究は今後も継続的に調査を実施し、対象者の一部を追跡予定です。また、温度、湿度、揮発性有機化合物、ダストなどの環境データの取得も検討しており、本研究で用いた質問調査と合わせ室内環境とシックハウス症候群に関する分析を実施する予定です」と、研究グループは述べている。

 研究は、積水ハウスと日本学術振興会(JSPS)、科学研究費補助金(C)および(若手)助成金番号のサポートを受けている。データ、論文作成に関して一切の関与は受けていないとしている。

出典:千葉大学予防医学センター、2021年

千葉大学予防医学センター
Risk factors for the onset of sick building syndrome: A cross-sectional survey of housing and health in Japan(Building and Environment 2021年6月17日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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