新型コロナ感染は1型糖尿病の新規発症リスクを上げる? 自己抗体とは関連なし

2022.08.30
SARS-CoV-2感染は1型糖尿病発症にかかわる自己抗体と関連なし

 1型糖尿病の発症にかかわる膵島関連自己抗体と重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染との間に、有意な関連は見られないとする研究結果が報告された。米コロラド大学バーバラ・デイビス糖尿病センターのMarian Rewers氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月5日、レターとして掲載された。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、COVID-19既往のある成人および小児ともに、糖尿病罹患率が上昇することを示唆するデータが報告されている。従来から、何らかのウイルス感染が自己免疫反応を引き起こすことが知られており、SARS-CoV-2感染も膵島関連自己抗体を出現させる可能性がある。Rewers氏らは、SARS-CoV-2の感染歴を有することは将来の1型糖尿病発症リスクにつながる自己抗体の出現と関連があるという仮説を立て、以下の検討を行った。

 仮説の検証には、米国およびドイツで行われた2件の研究のデータが用いられた。米国での研究は、コロラド州で1~18歳の小児または青年を対象に、自己免疫疾患のスクリーニングに関する研究として実施され、参加者は4,717人(年齢中央値8.6歳、女児50.3%)。ドイツでの研究は、バイエルン州で1~10.9歳を対象に、小児1型糖尿病のリスク因子などの研究目的で実施され、参加者は4万7,253人(同3.9歳、48.9%)。

 抗体検査により、米国のコホートでは1,524人(32.3%)、ドイツのコホートでは2,862人(6.1%)にSARS-CoV-2既感染が確認された。米国のコホートで21人(0.45%)、ドイツのコホートで141人(0.30%)に、複数の膵島関連自己抗体が検出された。さらに、同順に26人(0.55%)、54人(0.11%)は、単一の高親和性膵島関連自己抗体が陽性だった。

 複数の膵島関連自己抗体、および単一の高親和性膵島関連自己抗体の保有率を、SARS-CoV-2既感染の有無で比較すると、米国では既感染者が1.18%、非感染者が0.91%(P=0.43)、ドイツでは同順に0.42%、0.41%(P=0.88)であり、いずれも有意差がなかった。年齢、性別、1型糖尿病の家族歴、および人種/民族(米国のコホートのみ)を調整後、SARS-CoV-2既感染者が複数の膵島関連自己抗体を有することのオッズ比(OR)は1.06(95%信頼区間0.59~1.80)であり、有意な関連を認めなかった。また、単一の高親和性膵島関連自己抗体についてもOR1.34(同0.70~2.44)であって、有意な関連がなかった。

 感度分析として、兄弟に1型糖尿病患者のいる参加者、および、ワクチン接種歴のある参加者を除外した解析を行ったが、結果は変わらなかった。また、ドイツのコホートでは、SARS-CoV-2既感染が確認された参加者のうち465人に対して3カ月ごとに採血を継続し、膵島関連自己抗体の出現を中央値8.9カ月(四分位範囲3.4~10.3、最長2年)追跡したが、抗体出現は確認されなかった。

 著者らは、「SARS-CoV-2への感染が1型糖尿病の新規発症リスクを押し上げるか否かの判断には、既に何らかの自己抗体を有する人を対象に含めた長期的な追跡研究が必要」と述べている。

[HealthDay News 2022年8月9日]

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