糖尿病患者の主観的認知障害とMACEリスクが相関
Cukierman-Yaffe氏らはこの研究に、2型糖尿病患者を対象として、週1回投与型GLP-1受容体作動薬であるデュラグルチドによる心血管イベント抑制効果を検討した「REWIND研究」のデータを用いた。REWIND研究参加者のうち8,772人がベースライン検査で、モントリオール認知評価(MoCA)および数字記号置換テスト(DSST)の双方によって、認知機能が評価されていた。
MoCAとDSSTの国別平均値を算出した上で、いずれかのスコアが1.5標準偏差以下の場合に「主観的認知障害(substantive cognitive impairment;SCI)」と定義した。またこれとは別に、MoCAとDSST双方の幾何平均(geometric mean;GM)を国別に算出し、そのスコアが1.5標準偏差以下の場合に「SCI-GM」と定義。SCIやSCI-GMに該当する糖尿病患者の主要心血管イベント(MACE)発生リスク、および脳卒中または死亡のリスクを、SCIやSCI-GMに該当しない患者群と比較した。
まず、SCIとの関連の解析結果を見ると、認知機能の低下が見られない糖尿病患者7,867人(89.7%)と比較し、ベースライン時点でSCIに該当した糖尿病患者905人(10.3%)は以下のように、MACEや脳卒中または死亡リスクが有意に高いことが明らかになった。MACEは未調整ハザード比(HR)1.34(95%信頼区間1.11~1.62、P=0.003)、脳卒中または死亡については未調整HR1.60(同1.33~1.91、P<0.001)。
次に、SCI-GMとの関連で見ると、MACEは未調整HR1.61(同1.28~2.01、P<0.001)、脳卒中または死亡は未調整HR1.85(同1.50~2.30、P<0.001)であり、SCIよりも強固な関連が認められた。10項目の交絡因子を調整後、SCIとMACEや脳卒中または死亡との関連は有意性が消失したが、SCI-GMとの関連は有意性が保たれていた。
以上より著者らは、「認知機能の新たな指標である国別に標準化されたSCI-GMは、REWIND試験における2型糖尿病患者の心血管イベントの、独立した強力な予測因子である」と結論付けている。また、「認知機能の低下が心血管イベントリスク上昇をもたらすメカニズムは現時点で不明ながらも、心臓発作や脳卒中のリスクを減らすために、エビデンスのある薬物による介入が推奨される」と述べている。
なお、一部の著者が、REWIND研究の研究資金を提供したイーライリリー社を含む製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。
[HealthDay News 2021年4月26日]
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