内臓脂肪面積は炎症や糖尿病リスクに強く関連 体重管理・減量の介入では腹部脂肪の種類を考慮する必要が

2025.03.13

 体重管理と減量のための介入では、内臓脂肪と皮下脂肪の違いについて考慮する必要があり、脂肪の割合を減らすことと絶対面積を減らすことでは健康に与える影響が異なるという研究を、ハーバード大学公衆衛生大学院などが発表した。

 内臓脂肪面積はインスリン抵抗性や炎症などとより強く相関しており、割合はコレステロールなどとより強く関連しているとしている。

減量介入は個人の体脂肪のパターンに合わせて調整することが重要

 体重管理と減量のための介入では、内臓脂肪と皮下脂肪の違いについて考慮する必要があり、脂肪の割合を減らすことと絶対面積を減らすことでは健康に与える影響が異なるという研究を、ハーバード大学公衆衛生大学院などが発表した。

 BMI(体格指数)が同じ、あるいは内臓脂肪の量が同じ患者であって、内臓脂肪と皮下脂肪の分布状況により、まったく異なる健康リスクに直面する可能性があるとしている。

 標的にするべきなのは、糖尿病、心臓病、慢性炎症などの原因になる腹部深部脂肪であり、内臓脂肪と皮下脂肪とでは体の部位だけでなく代謝活動も異なり、内臓脂肪はインスリン抵抗性、炎症、心血管リスクの増加に関与しているとしている。

 研究は、ハーバード大学公衆衛生大学院栄養学部およびイスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学およびドイツのライプツィヒ大学のIris Shai氏らによるもの。研究成果は、「BMC Medicine」に掲載された。

 減量介入では、個人の体脂肪のパターンに合わせて調整することが重要であり、内臓脂肪の割合が高い患者は、絶対的な内臓脂肪面積が大きい患者と比較して、効果的な食事療法や運動療法などのアプローチは異なる可能性がある。内臓脂肪の動態を個別に理解することは、糖尿病、心血管疾患、メタボリックシンドロームに対するより効果的な戦略の実現につながるとしている。

内臓脂肪面積はCRPとHbA1cと強く関連 内臓脂肪率は高TG血症と関連

 「BMIと総体重の減少は、数十年ものあいだ、健康状態を改善するための指標とされてきたが、BMIが低いにもかかわらず内臓脂肪の割合が高い患者もいるなど、減量を単純な数字のゲームとして理解するような従来のやり方では十分ではない可能性がある」と、Shai氏は指摘している。

 「今回の研究は、どれだけの脂肪が減ったかだけでなく、どんな種類の脂肪が減ったか、そしてそれが代謝の健康にどう影響するかを考慮することを提案するものだ」としている。

 研究グループは今回、2件の18ヵ月間のランダム化比較試験(CENTRAL試験およびDIRECT-PLUS試験)のデータを統合し、減量食事介入の前後の572人の患者を対象に評価した。

 こられの研究は、これまでに実施されたMRI(磁気共鳴画像法)ベースの減量研究のなかで最大規模のもので、絶対的な内臓脂肪量、および腹部全体の脂肪に対するその割合の変化が測定された。これにより、内臓脂肪の動態が代謝の健康にどのような影響を与えるかを検証することが可能になった。

 内臓脂肪面積と内臓脂肪率(腹部全体の脂肪に対する内臓脂肪の割合)は、どちらも代謝機能障害と関連しているが、研究グループは、内臓脂肪率が高トリグリセリド血症のより強力な予測因子であることを発見した。一方、内臓脂肪面積は、糖尿病リスクの重要な指標であるCRP(C反応性タンパク)とHbA1cとより密接に関連していることを明らかにした。

 さらに18ヵ月の減量介入により、さまざまなタイプの脂肪の減少が、アウトカムにどのような影響を与えたかを検証した。その結果、内臓脂肪の絶対面積は平均して22.5%減少し、このことは糖尿病などの代謝性疾患の予防で重要なインスリン抵抗性、炎症マーカー、レプチンの低下により強く関連していた。一方、内臓脂肪の割合の減少は、肝機能と血中脂肪レベルの改善とより強く関連していた。

 参加した患者の内臓脂肪組織(VAT)について、ベースラインの量(VATcm²)は平均して144.8cm²、割合(VAT%)は28.2%だった。介入を開始し18ヵ月後に、28cm²VATcm²(マイナス22.5%)、1.3VAT%減少した。ベースラインのVATcm²とVAT%は、メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病の状態と関連していたが、VAT%は高トリグリセリド血症との関連が強く、VATcm²は高感度CRPの上昇との関連が強かった。

 18ヵ月のライフスタイル介入後、VATcm²とVAT%の両方の減少は、体重減少を超えて、トリグリセリド、HbA1c、フェリチン、肝酵素のそれぞれの減少、HDL-Cの上昇と有意に関連していた[FDR<0.05]。VATcm²の減少のみが、HOMA-IR、ケメリン、レプチンの低下と相関していた。

 「内臓脂肪の動態を理解することで、より効果的な戦略を立てられる可能性がある。内臓脂肪の割合が高い患者と、絶対的な内臓脂肪面積が大きい患者とでは、食事療法や運動療法などのアプローチが異なる可能性がある」と、研究者は指摘している。

What matters more when losing your belly fat? (ネゲヴ・ベン=グリオン大学 2025年3月5日)
Visceral adipose tissue area and proportion provide distinct reflections of cardiometabolic outcomes in weight loss; pooled analysis of MRI-assessed CENTRAL and DIRECT PLUS dietary randomized controlled trials (BMC Medicine 2025年2月4日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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