全国の検体測定室でPHRアプリと検査機器をデータ連携 HbA1cを近くの薬局でチェック 糖尿病を早期発見・管理 検体測定室連携協議会
糖尿病などの早期発見は重要 近くの検体測定室でHbA1cなどをチェック
検体測定室連携協議会(執行委員長:矢作直也・自治医科大学内科学講座内分泌代謝学部門教授)などは、薬局を中心に全国約2,000ヵ所に設置されている検体測定室で、同協議会の支援のもと、QRコードによるスマートフォンとの間の検査値情報のデータ連携を実現するPHRサービスである「NOBORI」アプリのアップデートが行われると発表した。
糖尿病などは初期には自覚症状に乏しいため、早期発見のために血液検査はとくに重要となる。検体測定室は、技術革新により登場してきた微量血液検査装置を活用し、糖尿病や脂質異常症の早期発見につながる簡易スクリーニングを、薬局-医療機関間の地域医療連携として行っている。
検体測定室では、指先の自己穿刺で得られる、ごく微量の血液からHbA1cやLDLコレステロール、トリグリセリド、HDLコレステロールなどの値を測定し、生活習慣病相当が疑われれば連携医療機関を紹介している。
HbA1cは、赤血球中のHb(ヘモグロビン)に糖分がどのくらい付着しているかをみるので、過去1~2ヵ月の平均血糖値を反映する検査項目で、糖尿病の早期発見に有用だ。
「POCT」は、「臨床現場即時検査」とも言い、被検者の傍らで医療従事者(医師や看護師など)自らが行える簡便な検査。また「POC生化学分析装置」は、そのなかで薬局などの検体測定室で実施可能な生化学検査項目(特定健康診査および特定保健指導の実施に関する基準に掲げられた項目の範囲内)を測定できる装置だ。
生活改善に取り組んだ成果を検体測定室で確認
「NOBORI」は、健診結果・検査結果、画像、薬、カルテなどの医療情報を管理でき、登録された受診者・患者で共有できるPHR(パーソナルヘルスレコード)サービス。
共有した医療情報を、受診者が自身の操作で、家族など第三者と共有できるほか、二次受診勧奨の通知、チャットによる特定保健指導のフォローアップなども可能だ。
検体測定室とPHRアプリが連携することで、検体測定室で測定した血液検査の情報を一元的に管理できるようになる。健康診断で生活習慣の改善のアドバイスを受け取り組んだ個人が、その成果を確認するために、検体測定室を訪れるといった利用拡大につながることも期待されるとしている。
今回の取り組みでは、街の薬局店頭に最新の医療機器を設置し、指先などから採取した全血を検体として使用し、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の早期発見のためのスクリーニング検査の機会を提供し、さらに異常値が出た場合には、連携医療機関へ受診勧奨を行うことで、最終的には日本の生活習慣病や動脈硬化性疾患全体を減らすことを目指しているという。
検体測定室連携協議会では、PHRアプリ「MySOS」についても、全国の約2,000ヵ所に設置されている検体測定室で、測定された検査値情報をQRコードを用いてスマートフォン間でデータ連携を実現するアップデートを支援している。
PHR(パーソナルヘルスレコード)を生活指導でも活用
近年、食事や運動などの生活習慣を改善し行動変容を促すしくみとして、PHR(パーソナルヘルスレコード)と呼ばれる、個人の活動量や体重などの健康指標を、スマートフォンを用いて年余に渡り管理し健康増進につなげることができるアプリが普及してきた。
PHRは、個人の健康・医療・介護に関する情報をさし、これらの情報を自身で管理するためのツールがPHRアプリ。PHRアプリに保存したデータを、自身の同意のもと、医療機関などと共有することで、より適切な医療サービスを受ける機会が増えることにつながると考えられている。
そうしたなか、検体測定室で得られる指先検査データを、QRコードを用いてスマートフォンに取り込み、PHRとの間でデータ連携を実現するアプリ開発が進められた。
これにより、検体測定室に設置されているPOC生化学分析装置のうち、アボットの「アフィニオン2」と、ロシュ・ダイアグノスティックスの「cobas b 101」および「cobas b 101 plus」で、データ連携機能が実現する。
今回の開発により、アボットの「アフィニオン2」と、ロシュ・ダイアグノスティックスの「cobas b 101」および「cobas b 101 plus」と、PSPの開発するPHRアプリ「NOBORI」とのあいだで、測定検査データのQRコード連携が実現した。
なお「アフィニオン2」は、インテグリティ・ヘルスケアの開発するPHRアプリ「Smart One Health」とのあいだで、また「cobas b 101」および「cobas b 101 plus」は、くすりの窓口のお薬手帳アプリ「EPARKお薬手帳」とメディエイドのPHRとの連携が可能なアプリ「からだパレット」とのあいだで、測定データのQRコード連携を実現済としている。
「検体測定室連携協議会では、セルフメディケーションの推進を目指し、全国の検体測定室の運営支援や精度管理を担うとともに、ホームページなどを通じた広報活動に取り組んでいます」としている。
今回の発表は、検体測定室連携協議会、アボット ダイアグノスティクス メディカル、PSP、自治医科大学 内科学講座 内分泌代謝学部門によるもの。
研究者は今後の展望として、「内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(第3期)「統合型ヘルスケアシステムの構築」(PD:永井良三・自治医科大学学長)の研究開発計画の中でも、PHRと医療データベース間のデータ連携が検討されており、今後、検体測定室やQRコード連携の活用が期待されます」と述べている。
NOBORI (PSP)
救命・健康サポートアプリ「MySOS」(アルム)