1型糖尿病患者のがんリスクがインスリン投与量と関連――DCCT/EDIC
2型糖尿病患者はがん罹患リスクが高いことが明らかになっているが、1型糖尿病患者も一般集団に比較して、いくつかの部位のがん罹患リスクが高いことが報告されている。ただし、1型糖尿病患者のがん罹患リスクに影響を及ぼす因子は不明。そこでZhong氏らは、今日の糖尿病医療の基盤となる多大なエビデンスを発信してきた、1型糖尿病患者対象の大規模臨床研究「Diabetes Control and Complications Trial(DCCT)」と、DCCT終了後の追跡観察研究「Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications(EDIC)」のデータを用いて、インスリン投与量とがん罹患リスクとの関連を検討した。
解析対象はDCCT/EDICの参加者1,441人のうち、がん罹患状況を追跡し得た1,304人で、うち1人は追跡開始以前のがん既往が記録されていたため除外した。28年間、3万3,813人年の追跡で93人(7.1%)にがんの診断が記録されていた。性別は女性が61%を占め、男性39%だった。1,000人年あたりの罹患率は2.8と計算された。
1日のインスリン投与量で全体を3群に分けると、低用量群のがん罹患率は1,000人年あたり2.11、中用量群は同2.87、高用量群では同2.91であり、投与量が多いほどがん罹患率が高い傾向にあった。多変量モデルで交絡因子を調整後も、1日あたりのインスリン投与量とがん罹患リスクとの関連性が確認された。
なお、経時的な変化を見ると、がん罹患者の9%は追跡開始から10年以内に診断され、11~20年の間に診断された患者が33%、21~28年の間に診断された患者が58%を占めていた。
この結果について著者らは、「解析から明らかになったインスリン投与量とがん罹患リスクとの関連は、残余交絡の影響によるものである可能性があり、必ずしも因果関係を示すものではない。この関連の検証のため、1型糖尿病患者を対象とする、より大規模な研究が必要とされる」と述べている。
[HealthDay News 2022年8月1日]
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