糖尿病重症化予防にAIを活用 栃木県で本格運用 効率的な事業計画の策定ときめ細かな保健指導
空腹時血糖などの血液検査数値や過去の病歴からAIが糖尿病の重症化を予測し、今後5年間に受診や入院が必要になる確率を算定する。被保険者単位で糖尿病既住歴の有無などから、将来の発症リスクを3段階で判定し、合併症の発症や透析治療が必要となる確率を予測・可視化することも可能としている。
医療ビッグデータ分析技術・ノウハウを活用
栃木県は、2017年度から「栃木県糖尿病重症化予防プログラム」に取り組んでいる。これまでは、市町が県から提供された県プログラムにもとづく保健指導の対象者リストをベースに、糖尿病リスクの高い被保険者に保健指導を行うため、年齢・性別・既往歴などの情報から手作業でさらに対象者を絞り込んでいた。
今回、日立の医療ビッグデータ分析技術・ノウハウを活用し、過去8年分の個人を特定できない匿名化された医科・調剤レセプトや健診のデータをもとにした、2型糖尿病の重症化予測に特化した栃木県独自の予測モデルを構築した。これにより、保健指導対象者の糖尿病リスク度が付与されたリストを提供することが可能になり、市町の負担を大幅に軽減することを期待できるとしている。
この予測モデルを活用すると、空腹時血糖などの血液検査数値や過去の病歴など、健康状態に関わる項目と糖尿病重症化リスクを結び付け、今後の5年間で、2型糖尿病が現状から重症化し受診や入院が必要になる確率を算出することができるという。
また、同サービスでは、被保険者単位で糖尿病既住歴の有無などから将来の発症リスクを3段階で判定し、合併症の発症や透析治療が必要となる確率を予測・可視化することが可能。これらの指標を参考に、保険者が緊急度に応じた効果的な受診勧奨や保健指導の実施ができるようになり、さらには重症化予防を期待できる。
近年、厚生労働省の国民健康保険被保険者を対象とした「国保ヘルスアップ支援事業」をはじめ、都道府県や市町村が実施する保健事業で、データを活用した効率的な実施状況の把握や重症化予防に向けた効果的な保健指導などの推進が求められている。
同県でも、糖尿病患者数が、約5万5,000人と全国平均を上回り年々増加している。県独自の予防プログラムである「栃木県糖尿病重症化予防プログラム」では、県民のレセプト・健診データを用いた保健指導対象者の抽出や、保険者と医療機関が連携した保健指導といった効率的な糖尿病重症化予防施策を進め、さらに、2018年度には、プログラムの基準にもとづく対象者を抽出する独自の仕組みを構築した。
一方、保健指導対象者が多いため、保険者が緊急に対応すべき指導対象者の選定に苦慮しており、より効率的・効果的な仕組みが求められていた。同社は、同県と同県国保連との取り組みにより培ったノウハウを生かし、同サービスを他自治体にも展開し、保健指導の効率化を目的に遠隔保健指導アプリケーションや保健指導効果測定の事業展開をはかるなど、課題解決への貢献を目指している。
栃木県糖尿病重症化予防プログラム
AIを活用した保健事業支援サービス(日立製作所)