日本人の亜鉛欠乏症は男性で36.6%、女性で33.1%と高頻度 1.3万人のレセプト情報を解析
亜鉛欠乏症の頻度は高齢者で高い 併存疾患の治療中の患者も
血清亜鉛濃度が60μg/dL未満の亜鉛欠乏症の患者は、男性で36.6%、女性で33.1%と、高頻度でみられることが、順天堂大学が大規模なレセプト情報をもとに、血清亜鉛濃度のデータが確認できた1万3,100人の患者を対象に解析した研究で示された。
亜鉛欠乏症の頻度は年齢とともに上昇し、性別・年齢で調整した多変量解析の結果では、肺炎・褥瘡・サルコペニア・COVID-19・慢性腎臓病などの併存疾患が関連しており、さらに利尿剤・抗生剤・抗貧血薬・甲状腺ホルモン治療などの現病歴も関連していることが分かった。
亜鉛は人体にとって重要な微量元素であり、骨・筋肉・肝臓・腎臓など全身に分布し、生体内の300以上の酵素反応に関与している。そのため、亜鉛不足による症状は多彩で、亜鉛欠乏症の症状として皮膚炎・口内炎・脱毛症・褥瘡(難治性)・食欲低下・発育障害(小児で体重増加不良、低身長)・性腺機能不全・易感染性・味覚障害・貧血・不妊症などが報告されている(日本臨床栄養学会)。
研究グループはこれまで、人間ドック受診者の亜鉛欠乏の実態などを報告しており、今回は日本人の亜鉛欠乏症患者の理学的および臨床的特徴を明らかにするために、レセプト情報をもとにした大規模データベースを利用し評価した。
2019年1月~2021年12月にメディカル・データ・ビジョンが急性期医療機関から収集したデータに登録された、全国の匿人化されたレセプト情報を用い、大規模データベースを構築。うち血清亜鉛濃度が確認できた1万5,328人中、適格基準を満たした1万3,100人を解析対象とした。
亜鉛欠乏症患者の頻度は年齢とともに上昇
研究は、順天堂大学医学部総合診療科学講座の内藤俊夫主任教授、横川博英先任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
「併存疾患のため治療中の患者で、亜鉛欠乏症の頻度は比較的高く、消耗性疾患の併存は亜鉛欠乏の関連要因であることが示唆された。多くの併存疾患が低亜鉛血症の関連要因であることから、これらの併存症の治療の際にも、血清亜鉛濃度の評価などが栄養状態の評価とともに重要であることが示唆された」と、研究グループでは述べている。
「亜鉛欠乏症に関連する症状がみられる場合は生体内の亜鉛不足を疑い、血清亜鉛濃度の測定結果をもとに併存疾患のより適切な治療につなげることが望まれる」としている。
順天堂大学医学部総合診療科学講座
Demographic and clinical characteristics of patients with zinc deficiency: analysis of a nationwide Japanese medical claims database (Scientific Reports 2024年2月2日)