自動インスリン投与システムの適応を2型糖尿病患者に拡大 1型糖尿病向けには2年前に承認 米FDA

2024.09.04
FDAが自動インスリン投与システムの適応を2型糖尿病に拡大

 米食品医薬品局(FDA)は、従来2歳以上の1型糖尿病に適応を有していた、Insulet社の自動インスリン投与システム「Omnipod 5」を、18歳以上の成人2型糖尿病患者へ適応拡大することを承認した。これにより同製品は、1型糖尿病と2型糖尿病の双方に適応をもつ、はじめてで唯一の自動インスリン投与システムとなる。

 Omnipod 5は、インスリン注入ポンプや持続血糖モニターと連動して、指先穿刺による血糖測定やインスリン注射をせずに、血糖管理を可能にするシステム。5分ごとにその時点の血糖値と血糖変動に見合った最適なインスリン投与量を判定し、最大3日間、インスリンを自動で投与し続ける。FDAは2022年に、同製品を1型糖尿病患者向けに承認していた。

 今回の適応拡大に際して、18歳以上の2型糖尿病患者を対象に行われた臨床試験「SECURE-T2D研究」の結果が検討された。この研究の参加者は289人で、年齢、人種/民族、教育歴、収入の異なる多様な背景をもち、インスリン注射やGLP-1受容体作動薬などによる治療を行っていた。

 Omnipod 5を用いた13週間の介入により、患者背景にかかわらず全てのサブグループで血糖コントロールの改善が認められた。

 頻回注射療法(multiple daily injections;MDI)との比較ではHbA1cが0.8%有意に低下し、特に介入前のHbA1cが9.0%以上だった群では2.1%低下した。

 全体として、高血糖の時間や1日の総インスリン投与量が減少し、低血糖の時間は増えることなく、血糖値が至適範囲内にある時間が20%(1日当たり4.8時間)増加した。有害事象は軽度~中等度の範囲であり、多くは高血糖、低血糖、皮膚刺激症状などだった。

 FDA医療機器・放射線保健センターのMichelle Tarver氏は、「FDAは糖尿病患者のコミュニティーと長年協力し、糖尿病管理に必要とされる医療機器へのアクセスを確保・改善してきた。糖尿病のように、日々の自己管理を必要とする慢性疾患を抱える人々の健康と生活の質の改善につながる、新しい医療機器のイノベーションのためにFDAは力を注いでいる」と話している。

 またInsulet社の最高経営責任者(CEO)であるJim Hollingshead氏は、「FDAのこの発表は、使いやすく患者中心のテクノロジーを2型糖尿病の治療に普及させていく上で重要な節目となる」と述べている。なお、Insulet社は現時点において、日本国内で事業展開をしていない。

 米国の2型糖尿病患者数は3000万人以上で、そのうち約600万人がインスリン療法を必要とし、250万人がMDIを行っているとされている。過去20年ほどの間に糖尿病の薬物療法は大きく進歩したが、推奨されるHbA1cの目標を達成している患者の割合はあまり変化しておらず、インスリン療法中の2型糖尿病患者のうち、HbA1c7.0%以下は4分の1で、半数は8.0%を超えているという。

[HealthDay News 2024年8月27日]

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