GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」 年齢やBMIに関わらず体重が大幅減少 欧州肥満学会
チルゼパチドの第3相試験「SURMOUNT-1」の新たな分析
GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」(商品名:マンジャロ)による体組成の改善は、過体重あるいは肥満の成人患者の全体で一貫しているという、第3相試験「SURMOUNT-1」の新たな分析について欧州肥満学会(EASO)が発表した。
研究は、米コーネル大学医学部内分泌・糖尿病・代謝部門および総合体重管理センターのLouis Aronne氏らによるもの。
チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に単一分子として作用する世界初のGIP/GLP-1受容体作動薬。
「SURMOUNT-1」は第3相二重盲検ランダム化対照試験で、BMIが30以上の成人、あるいはBMIが27以上で糖尿病以外の体重に関連する合併症を1つ以上有する成人の計2,539例を対象に、チルゼパチドを週1回投与した。詳細は、すでに「New England Journal of Medicine」に2022年7月に掲載されている。
72週の時点での体重の変化量(%)の平均は、チルゼパチド週1回5mg群で-15.0%、10mg群で-19.5%、15mg群で-20.9%、プラセボ群では-3.1%になった。5%以上の減量は、チルゼパチド5mg群で85%、10mg群で89%、15mg群で91%、プラセボ群で35%になった。
年齢やBMIに関わらず体重が大幅減少 除脂肪体重の過剰な減少はみられず
今回公表された「SURMOUNT-1」の新たな分析では、DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)による測定を受けた部分集団の体組成を評価。50歳未満(n=99)、50~64.9歳(n=41)、65歳以上(n=20)の年齢のサブグループ内の、体組成のベースラインからの変化を評価した。
BMIのカテゴリーは、27以上30未満、30以上35未満(クラス1肥満)、35以上40未満(クラス2肥満)、40以上(クラス3肥満)に分けて評価。
その結果、年齢層に応じて、脂肪量は33~36%、除脂肪量は10~11%、それぞれ減少した。食事と身体活動に関する試験で観察されたように、減少した体重の4分の1のみが除脂肪体重で、体組成は全体的に改善されたことが示された。
年齢サブグループ(50歳未満、50~64.9歳、65歳以上)の全体でも変化はほぼ同一であり、高齢者のグループでも除脂肪体重の過剰な減少は示されなかった。
「肥満の参加者を対象としたこの72週間の試験では、週1回のチルゼパチド投与により、すべてのBMIカテゴリーで一貫して体重が大幅に減少し、年齢層全体で一貫した体組成の改善が得られた」と、Aronne氏らは結論付けている。
「肥満症は、糖尿病、高血圧、肥満によって引き起こされる多くの疾患と同様に慢性疾患であり、持続的な治療が必要となることは予期されていたことだ。とくに高齢者では、体重減少が脂肪量と除脂肪量に及ぼす影響について注する必要がある。今回の新しい分析では、減少した体重の4分の3が脂肪量であり、さまざまな年齢で一貫していたことが示された」としている。
なお、チルゼパチドは米国および欧州で2型糖尿病の治療薬として承認されているが、肥満症治療薬としてはどの国でもまだ承認されていない。イーライリリー社は、2023年から米国食品医薬品局(FDA)や欧州連合(EU)などに肥満症治療薬としての承認を求めるとしている。
過体重・肥満をともなう2型糖尿病では最大15.7%の体重減少
イーライリリー社は、日本人を含む938人の過体重・肥満をともなう2型糖尿病患者を対象とした「SURMOUNT-2」の結果も公表している。
チルゼパチド10mg群、15mg群、プラセボ群に1:1:1の比率で割り付け72週間の介入を行い、チルゼパチドが割り当てられた患者では、週1回2.5mgから開始し、4週ごとに用量を増量した。
その結果、介入による体重変化率は、チルゼパチド10mg群で-13.4%(13.5kg)、15mg群で-15.7%(15.6kg)、プラセボ群で-3.3%(3.2kg)になった。5%以上の体重減少を達成した割合は、10mg群で81.6%、15mg群で86.4%、プラセボ群で30.5%だった。
投与中止に関係なく解析した治療計画推定値では、チルゼパチド10mg群は-12.8%、15mg群は-14.7%、プラセボ群が-3.2%の減量幅になり、5%以上の体重減少を達成した割合は、10mg群で79.2%、15mg群で82.7%、プラセボ群で32.5%だった。
もっとも多くみられた有害事象は消化器症状であり、嘔気が10mg群で20.2%、15mg群は21.9%、下痢はそれぞれ19.9%と21.5%、嘔吐は10.9%と13.2%、便秘は8.0%と9.0%などと報告されている。
なお、チルゼパチド(商品名:マンジャロ)は、2型糖尿病の成人患者向けの注射薬で、血糖値を改善するために食事療法や運動療法と併用して使用するものとしている。
Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity (New England Journal of Medicine 2022年7月21日)
New analysis shows improved body composition with tirzepatide is consistent across adult age groups with overweight or obesity (欧州肥満学会 2023年5月21日)
Tirzepatide for the Treatment of Obesity: the SURMOUNT-1 Clinical Trial (ECO2023 Abstract 2023年5月18日)
Lilly's tirzepatide achieved up to 15.7% weight loss in adults with obesity or overweight and type 2 diabetes in SURMOUNT-2 (イーライリリー アンド カンパニー 2023年4月27日)
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