SGLT-2阻害薬が糖尿病網膜症の進行を遅らせる可能性 DPP-4阻害薬と比較
SGLT-2阻害薬が非増殖性網膜症の病歴のある2型糖尿病患者の網膜症の進行リスクを22%低下
SGLT-2阻害薬が2型糖尿病患者の糖尿病網膜症の進行を遅らせる可能性があることが、ブリガム アンド ウィメンズ病院(BWH)やマサチューセッツ総合病院(MGH)の共同研究により示された。
研究は、BWH薬剤疫学部門のHelen Tesfaye氏らによるもの。研究成果は、「JAMA Ophthalmology」に掲載された。
研究では、SGLT-2阻害薬(エンパグリフロジン)の投与は、非増殖性網膜症の病歴のある2型糖尿病患者の網膜症の進行リスクを22%低下させることと関連することが示された。一方、網膜症の病歴のない患者では非増殖性網膜症を発症するリスクを低下させなかった。
「糖尿病網膜症は、糖尿病患者の約26%に影響を及ぼす。SGLT-2阻害薬が、糖尿病網膜症のより進行した段階への進行を遅らせるのに有益である可能性が示されたことは、非増殖網膜症を発症した患者、あいは網膜症を発症するリスクのある糖尿病患者の臨床的意思決定に役立つ可能性がある」と、Tesfaye氏は指摘している。
研究グループは、2014年8月~2019年9月の米国全国保険請求データを調べ、SGLT-2阻害薬(エンパグリフロジン)あるいはDPP-4阻害薬のいずれかの投与を開始した2型糖尿病の成人患者3万5,867人(男性 52.4%、平均年齢 65.6歳)を、続くDR進行コホートでは8,229人の患者(男性 52.5%、平均年齢 67.0歳)を比較した。解析は、2022年8月~2024年5月まで続けられた。
その結果、SGLT-2阻害薬が投与された患者では、DPP-4阻害薬が投与された患者に比べて、非増殖網膜症の新規発症率に差はみられなかったが[HR 1.04; 95%CI 0.94~1.15; RD 1.30; 95%CI −1.83~4.44]、その進行リスクは低いことが示された[HR 0.78; 95%CI 0.63~0.96; RD −9.44; 95%CI −16.90~−1.98]。この結果は、複数のサブグループおよび感度の分析でも一貫していた。
「SGLT-2阻害薬はDPP-4阻害薬と比較すると、非増殖網膜症の発症とは関連していなかったものの、網膜症の進行リスクを抑制する可能性が示された。今回の研究は観察研究であるため、交絡因子を完全に排除することはできないが、この知見は成人の2型糖尿病患者のさまざまな血糖降下薬のリスクとベネフィットを比較し検討する際に役立つ可能性がある」と、ハーバード大学医学部およびMGH糖尿病ユニットのDeborah Wexler氏は述べている。
「多分野にわたるグループの臨床および解析の専門知識を活用することで、臨床試験では研究されていない、あるいは明らかにされていない糖尿病治療薬のリスクとベネフィットを特定することができる」としている。
Study finds SGLT-2 inhibitor may slow progression of diabetic retinopathy in patients with type 2 diabetes (マサチューセッツ総合病院 2024年12月13日)
Empagliflozin and the Risk of Retinopathy in Patients With Type 2 Diabetes (JAMA Ophthalmology 2024年12月5日)