高脂血症治療薬「ペマフィブラート」は高TG/低HDL-C糖尿病患者の脂質値を有意に改善 心血管イベントは抑制せず

2022.11.17
高TG/低HDL-C糖尿病患者へのペマフィブラート投与で心血管リスク低下せず

 スタチンで治療されている高TG/低HDL-C血症併発2型糖尿病患者にペマフィブラートを追加投与しても、心血管イベントリスクは低下しないことを示すデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のAruna Das Pradhan氏らの研究によるもので、米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で報告され、「The New England Journal of Medicine」に論文が同時掲載された。

 2型糖尿病患者は心血管イベントリスクが高く、スタチンなどを用いてLDL-Cを下げてもリスク抑制が十分でないため、残余リスク因子の探索が続けられている。残余リスク因子の候補の1つとして、糖尿病やメタボリックシンドロームに多い、高TG/低HDL-C血症が挙げられている。ただ、高TG/低HDL-C血症の改善に有効なフィブラート製剤による心血管イベント抑制効果のエビデンスは、スタチンに比べて少ない。一方、比較的新しいフィブラート製剤であるペマフィブラートは、既存薬より強力なTG低下、HDL-C上昇作用が報告されている。Pradhan氏らは、このペマフィブラートの有用性を、多国籍二重盲検無作為化比較対照試験で検討した。

 研究対象は、軽度から中等度の高TG血症(200~499mg/dL)かつ低HDL-C血症(40mg/dL以下)を併発している2型糖尿病患者1万497人。年齢中央値64歳、女性27.5%であり、66.9%は二次予防目的での介入というハイリスク集団だった。95.7%にスタチンが投与されており、ベースラインのTGは中央値271mg/dL、HDL-Cは33mg/dLであって、LDL-Cは78mg/dLに管理されていた。

 無作為にペマフィブラート群(0.2mgを1日2回)またはプラセボ群に割り付け、中央値3.4年(最大5.0年)介入。非致死性心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈血行再建術、心血管死で構成される複合エンドポイントを主要評価項目として検討した。

 まず、介入4カ月後の脂質関連検査値を比較すると、ペマフィブラート群はプラセボ群より、TGが-26.2%、超低密度リポタンパク(VLDL)コレステロールは-25.8%、レムナントコレステロールは-25.6%、アポリポタンパクC-IIIは-27.6%、それぞれ低値であり有意な群間差が認められた。

 複合エンドポイントは、ペマフィブラート群では5,240人中572人、プラセボ群は5,257人中560人に発生。ハザード比(HR)は1.03(95%信頼区間0.91~1.15)であり、群間差は非有意だった。

 重篤な有害事象の全体的な発生率には有意な群間差がなかったが、個別に見ると、腎関連イベント〔HR1.12(同1.04~1.20)〕と静脈血栓塞栓症〔HR2.05(同1.35~3.17)〕の発生率は、ペマフィブラート群の方が有意に高かった。一方、非アルコール性脂肪性肝疾患〔HR0.78(同0.63~0.96)〕の発生率は、ペマフィブラート群の方が有意に低かった。

 著者らは、「LDL-Cが管理されながらも、軽度から中等度の高TG/低HDL-C血症のある2型糖尿病患者を対象とする本研究では、ペマフィブラートにより血清脂質値が有意に改善したが、心血管イベント抑制の上乗せ効果は確認されなかった」と結論付けている。

 本論文に対して、米ベイラー医科大学のSalim S. Virani氏が付随論評を寄せている。その中で同氏は、「これまで行われてきたフィブラート関連の臨床研究では、全体解析の結果がネガティブでも、高TG/低HDL-C血症患者での事後解析では有意な結果が示されていた。今回の研究対象は全員が高TG/低HDL-C血症患者だが、結果は非有意だった。この事実は、事後解析データの臨床への適用は慎重に行うべきであることの重要性を示している」と述べている。

 なお、数人の著者がペマフィブラートのメーカーであり本研究に資金を提供した興和を含む、製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。

[HealthDay News 2022年11月8日]

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