閉経後のホルモン補充療法により糖尿病や骨折のリスクは低下 尿失禁や胆嚢疾患のリスクは上昇
米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のGerald Gartlehner氏らは、慢性疾患一次予防目的でのホルモン療法の有用性とリスクに関するエビデンスを更新するため、システマティックレビューを実施した。2016年1月以降に、PubMed/MEDLINE、Cochrane Library、EMBASE、および治験レジストリに公開された、無作為化比較試験(RCT)または前向きコホート研究の報告で、英語で執筆されており研究の質が高いと判断される論文を検索。計3万9,145人を対象とする20件のRCTと、計115万5,410人を対象とする3件の大規模コホート研究を抽出した。
エストロゲン単独介入が行われていた研究のメタ解析(追跡期間は全死亡が2~7.2年、骨粗鬆性骨折7.2年、認知症5.2年、尿失禁1年、その他は7.1年)の結果、糖尿病〔1万人当たりの発症数-134(95%信頼区間-237~-18)〕と、骨粗鬆症性骨折〔同-388(-489~-277)〕の有意なリスク低下が観察された。その一方、尿失禁〔885(659~1,135)〕、胆嚢疾患〔377(234~540)〕、脳卒中〔79(15~159)〕、静脈血栓塞栓症〔77(19~153)〕の有意なリスク上昇が認められた。浸潤性乳がん、大腸がん、肺がん、冠動脈性心疾患、認知症の疑い、および、がん死、全死亡については有意差がなかった。
エストロゲン/プロゲスチン併用療法が行われていた研究のメタ解析(追跡期間は骨粗鬆性骨折と冠動脈疾患が2~5.6年、認知症4年、尿失禁1年、その他5.6年)の結果、糖尿病〔-78(-133~-15)〕、骨粗鬆症性骨折〔同-230(-372~-66)〕、大腸がん〔-34(-51~-9)〕の有意なリスク低下が観察された。その一方、尿失禁〔562(412~726)〕、胆嚢疾患〔260(169~364)〕、静脈血栓塞栓症〔120(68~185)〕、認知症の疑い〔88(15~212)〕、脳卒中〔52(12~104)〕、浸潤性乳がん〔51(6~106)〕の有意なリスク上昇が認められた。肺がん、冠動脈性心疾患、および、がん死、全死亡については有意差がなかった。
これらの結果に基づきUSPSTFは、閉経後女性の慢性疾患一次予防目的でのエストロゲン/プロゲスチン併用療法にはメリットはなく、また、子宮摘出術を受けた閉経後女性の慢性疾患一次予防のためのエストロゲン単独療法にもメリットはないと結論付けた上で、推奨グレードDのステートメントを掲げている。USPSTFの推奨グレードDは、「中等度または高い確実性でこの医療にはメリットがないか、デメリットがメリットを上回り、当該医療を行わないことを推奨する」というもの。
なお、このステートメントについて著者らは、「重要なこととして、この推奨は、閉経後の慢性疾患を予防するためにホルモン療法を考慮している女性のみに当てはまるもの」と述べ、他の目的でのホルモン療法を含むものではないことに注意を促している。
[HealthDay News 2022年11月1日]
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