FDAが1型糖尿病の発症を遅らせる初の薬剤を承認
1型糖尿病は、自己抗体がインスリン産生細胞を攻撃して破壊した結果として発症する疾患。あらゆる年齢層で発症し得るが、小児や若年成人での発症が多い。また、通常、1型糖尿病患者には家族歴が見られないものの、親やきょうだいに1型糖尿病患者がいる場合、発症リスクが高くなる。
1型糖尿病のハイリスク者では、自己抗体が出現したステージ1、血糖異常が生じ始めたステージ2を経て、ステージ3(1型糖尿病の診断)に至る。それに対してTzieldは、ステージ2の成人および8歳以上の小児のステージ3への進行を遅延させる薬剤として承認された。この作用は、同薬がインスリン産生細胞を攻撃する免疫細胞を不活性化することなどによるものと考えられている。FDAのJohn Sharretts氏はニュースリリースの中で、「この薬によって1型糖尿病の患者が数ヵ月から数年間、病気の負担から解放される可能性がある」と述べている。
Tzieldの安全性と有効性は、無作為化二重盲検プラセボ対照試験で検討された。ステージ2に該当する76人〔18歳以下が55人(72%)〕を無作為に実薬群(44人)とプラセボ群(32人)に群分けし、1日1回、14日間にわたり静脈内投与。中央値51ヵ月の追跡で、実薬群の45%、プラセボ群の72%が1型糖尿病と診断された。1型糖尿病と診断されるまでの期間の中央値は、実薬群が50ヵ月、プラセボ群は25ヵ月であり、有意な差が認められた。
頻度の高い副作用として、白血球レベルの低下、発疹、頭痛などが報告されている。また、サイトカイン放出症候群や重篤な感染症リスクへの適切な対応、年齢に応じた全てのワクチンの事前接種が必要とされる。同薬と生ワクチン、不活化ワクチン、mRNAワクチンの同時接種は避ける。
今回のFDA承認について、非営利団体JDRF(旧・若年性糖尿病研究財団)のAaron Kowalski氏は、「1型糖尿病の発症を遅延させることは、糖尿病のリスクがある人々の日常生活、その家族、および医療システム全体に、大きな影響を与えるだろう」と高く評価している。また同氏は、「発症遅延によって、ハイリスク者が1型糖尿病のコントロールについて学ぶ機会を確保でき、発症後の絶え間ない血糖モニタリングとインスリン投与のストレスや、急性・慢性の合併症の恐怖から患者を解放してくれる」と述べている。
なお、Tzieldの承認はProvention Bio社に付与され、承認に際しては優先審査とブレークスルーセラピーの指定を受けていた。(HealthDay News 2022年10月17日)
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