米国神経学会が糖尿病神経障害による疼痛の治療ガイドラインを改訂

2022.01.13
 米国神経学会(AAN)は、糖尿病神経障害による疼痛の治療に関するガイドラインを改訂。米ペンシルベニア大学のRaymond Price氏らによる、改訂版ガイドラインのサマリーが、「Neurology」1月4日号に掲載された。

 AANでは2011年に、糖尿病神経障害の疼痛管理に関するガイドラインを発行した。その内容のアップデートのためPrice氏らは、2008年1月~2020年4月に報告された論文を対象とするシステマティックレビューを実施し、新たなエビデンスを確認した。明らかになった主な知見は以下の通り。

 ガバペンチノイドの疼痛抑制効果は、対プラセボで標準化平均差(SMD)が0.44(95%信頼区間0.21~0.67)であり、以下同様に、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)はSMD 0.47(0.34~0.60)、ナトリウムチャネル遮断薬はSMD 0.56(0.25~0.87)、SNRI作用を有するオピオイド(トラマドールなど)はSMD0.62(0.38~0.86)だった。これらは全てSMDが0.5前後であり、エビデンスの信頼性は中程度と判定された。

 一方、三環系抗うつ薬(TCA)はSMDが0.95であり効果量は大きい可能性があるものの、95%信頼区間が0.15~1.8であり、信頼性は低レベルと判定された。

 これらの検討の結果としてガイドラインでは、十数項目からなる推奨を掲げており、以下にその一部を抜粋する。糖尿病患者の神経障害性疼痛と、それにともなう機能および生活の質(QOL)への影響を評価する必要がある。糖尿病神経障害性疼痛への薬物治療に際して、治療目標は痛みの軽減であり、必ずしも痛みが消失するものではないことを患者に伝える必要がある。疼痛が改善しない場合や最初に処方した薬剤で重大な副作用が発生した場合、異なる機序の薬剤を使用する。糖尿病神経障害性疼痛の治療にオピオイドを使用すべきでない。

 ガイドラインでは推奨項目の推奨レベルを、A(極めて強い推奨)、B(強い推奨)、C(弱い推奨)の3段階で示しており、上記の推奨項目は全てレベルB。レベルAに該当する推奨項目はない。

 著者らは、「痛みをともなう糖尿病神経障害には多くの治療選択肢が存在し、それぞれの患者にあわせて治療計画を個別に調整することが可能である」と述べている。

 なお、数人の著者が、医薬品・医療テクノロジー、出版、その他の企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

[HealthDay News 2021年12月 30日]

Copyright ©2022 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料