1型糖尿病はもはや寿命短縮のリスク因子ではない 高齢1型糖尿病患者の寿命が延伸
Yang氏らは、世界保健機関(WHO)が行っている「世界疾病負担研究」などのデータを用いて、65歳以上の高齢1型糖尿病患者の有病率や寿命、障害調整生存年(DALY)などが、1990年以降の約30年間でどのように変化してきたかを解析した。
その結果、年齢調整有病率は、1990年が人口10万人当たり400[95%不確定区間332〜476]であったのに対して、2019年には同514人[417〜624]へと増加していた。また65歳以上の1型糖尿病患者数は、1990年には130万人と推定されていたが、2019年には370万人以上に増加していた。この間に、人口10万人当たりの死亡率は、4.74[同3.44~5.9]から3.54[2.91~4.59]へと、25%低下していた。
年齢調整後のDALYは、1990年の人口10万人当たり113[同89~137]から2019年には103[85~127]に低下し、1年当たりの変化率は-0.33%/年[95%信頼区間-0.41~-0.25]だった。DALYの変化率を年齢層別に見ると、65~69歳では-0.44%/年[同-0.53~-0.34]、70~74歳は-0.34%/年[-0.41~-0.27]、75~79歳は-0.42%/年[-0.58~-0.26]だった。
著者らは、「過去30年間の医療の向上により、1型糖尿病はもはや寿命短縮のリスク因子ではなくなった。世界中の1型糖尿病の高齢者とその家族にとって、この疾患に関連する死亡率とDALYが低下しているという事実は心強い情報と言えるのではないか」と述べている。
ただし、高齢1型糖尿病患者の疾病負担の減少が、世界全体で均一に進行しているわけではなく、各国の経済状況と関連のあることも明らかになった。具体的には、社会人口統計学的指数の高い国における死亡率の低下速度[-2.17%/年、95%信頼区間-2.31~-2.02]は、その指数が低い国での低下速度[-0.16%/年、同-0.45~0.12]に比べて、約13倍速かった。
なお、日本の2019年時点の65歳以上の年齢調整1型糖尿病有病率は、人口10万人当たり469[95%不確定区間381~570]、死亡率は同0.312[0.229~0.575]、年齢調整DALYは48[33~66]と報告されている。また、死亡率は-4.6%/年[95%信頼区間-4.84~-4.36]の速度で低下しており、DALYの変化率は-0.31%/年[同-0.35~-0.27]と報告されている。
[HealthDay News 2024年6月14日]
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