肉類の摂取が2型糖尿病リスクと関連 ハム2枚分の加工肉は10年間で糖尿病リスクを15%上昇 日本を含む20ヵ国を調査

2025.01.29

 肉類の摂取、とくに加工肉と未加工の赤身肉の摂取は、2型糖尿病の発症リスクの上昇と関連しているという調査結果を、英ケンブリッジ大学などが発表した。

 日本や中国を含む20ヵ国の31コホートに参加した約197万人の成人と10万件の2型糖尿病の発症例を解析した。

 その結果、加工肉を1日50g(ハム2枚分)習慣的に摂取していると、10年間で2型糖尿病を発症するリスクが15%高まることが示された。未加工の赤身肉を1日100g(小さなステーキ1枚分)摂取すると、発症リスクは10%高まった。

加工肉や赤身肉の摂取量が多いと2型糖尿病の発症リスクが上昇

 肉類の摂取、とくに加工肉と未加工の赤身肉の摂取は、2型糖尿病の発症リスクの上昇と関連しているという調査結果を、英ケンブリッジ大学などが発表した。

 日本や中国を含む20ヵ国の31コホートに参加した約197万人の成人と10万件の2型糖尿病の発症例を対象に、individual-participant federated meta-analysisを実施した。

 研究は、同大学臨床医学部およびケンブリッジ代謝科学研究所のNicholas Wareham教授らによるもので、研究成果は、「Lancet Diabetes & Endocrinology」に掲載された。

 「世界の食肉生産量はここ数十年で急増しており、多くの国で食肉の消費量が食事ガイドラインで示された基準量を超えている。過去の研究でも、加工肉や赤身肉の摂取量が多いと2型糖尿病の発症リスクが上昇することが示されていたが、結果はさまざまで決定的なものはなかった」と、Wareham教授は言う。

 「今回の研究は、2型糖尿病の症例を減らすために、加工肉や未加工の赤身肉の過剰摂取を制限するという推奨の正当性を裏付けるものだ。加工肉や赤身肉と将来の2型糖尿病リスクの上昇との関連について、これまででもっとも包括的なエビデンスを提供している」としている。

 研究グループは、欧州連合(EU)からイノベーション研究プログラムとして支援されているInterConnectプロジェクトの、20ヵ国の31の研究コホートのデータを、年齢、性別、健康関連行動、エネルギー摂取量、体格指数などの要因を考慮し解析した。

 対象となったのは、成人196万6,444人で、10年(中央値、四分位範囲 7~15年)の追跡期間中に、2型糖尿病の発症例が10万7,271件確認された。コホート全体の肉類消費量の中央値は、未加工の赤身肉では0~110g/日、加工肉では0~49g/日、家禽肉では0~72g/日だった。

 解析した結果、3種類の肉のそれぞれの摂取量が多いと、2型糖尿病の発症率が上昇することが明らかになった。

 未加工の赤身肉100g/日を習慣的に摂取した場合のハザード比(HR)は1.10[95%CI 1.06~1.15、I2=61%]、加工肉50g/日のHRは1.15[同 1.11~1.20、I2=59%]、家禽肉100g/日あたりのHRは1.08[同 1.02~1.14、I2=68%]になった。なお、加工肉の1日50gはハム2枚分に相当するという。

 異なるシナリオで結果を検証するためにさらに分析を行ったところ、家禽肉摂取との関連は弱まったが、加工肉と未加工肉の2型糖尿病との関連は持続して認められた。

日本を含む西太平洋地域も調査対象に エビデンスベースを大幅に拡大

 対象となった31のコホートの内訳は、アメリカ大陸(ブラジル、メキシコ、プエルトリコ、米国)から12件、ヨーロッパ地域(デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン、スイス、オランダ、英国)から9件、西太平洋地域(オーストラリア、中国、日本、シンガポール)から7件、東地中海地域(イラン)から2件、東南アジア地域(バングラデシュ)から1件で、3分の1は西太平洋地域の対象者で占められた。

 肉類の摂取と2型糖尿病についての研究は、これまでは米国と欧州で実施された調査を取り上げることが多く、東アジアで実施された調査は一部にとどまっていた。今回の研究では、西太平洋地域、中東、ラテンアメリカ、南アジアでの調査も含まれている。

 InterConnectプロジェクトは、参加した研究者が発表結果に限定されることなく、個々のデータをさまざまな手法で分析できるアプローチを採用しており、それにより今回の研究では最大の31件の研究を分析に含めることが可能性になり、うち18件は肉類の摂取と2型糖尿病との関連性について発表されたものではなかった。

 「InterConnectにより、世界中のさまざまな国や地域の人口全体にわたり肥満と2型糖尿病のリスク要因を調査できるようになり、従来のメタ解析では十分に検討されていなかった国も含めることができるようになった。エビデンスベースを大幅に拡大することで、バイアスの可能性を減らすことができる」と、Wareham教授は指摘する。

 「統一されたデータを使用することで、肉類の摂取と2型糖尿病の関連性に影響を与える可能性のあるライフスタイルや健康行動などのさまざまな要因をよりシンプルに考察できるようになった」としている。

 「今回の研究結果は、肉類の摂取と2型糖尿病の関連性について、これまで得られていたものよりも包括的なエビデンスを提供するものだが、2つの因果関係は依然として不確かであり、今後さらに調査する必要がある」と、ケンブリッジ大学医学研究会議(MRC)疫学ユニットのNita Forouhi教授は述べている。

Red and processed meat consumption associated with higher type 2 diabetes risk, new study in two million people finds (ケンブリッジ大学 2024年8月21日)
Meat consumption and incident type 2 diabetes: an individual-participant federated meta-analysis of 1·97 million adults with 100 000 incident cases from 31 cohorts in 20 countries (Lancet Diabetes & Endocrinology 2024年9月)
InterConnect Project

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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