メトホルミンが糖尿病治療に加えてがんリスクを軽減する可能性 全体的ながん発症率の減少と関連

2024.04.17
 メトホルミンは糖尿病管理での役割に加えて、がんリスクを軽減する可能性があることが、米国国立がん研究所(NCI)などによる、メトホルミン使用とがんリスクの関連を包括的系統的にレビューした166件の研究のメタ解析で示された。

 メトホルミンの使用は全体的ながん発症率の有意な減少と関連しており、前向きコホート研究[RR 0.65、95%CI 0.37~0.93]、症例対照研究[RR 0.55、95%CI 0.30~0.80]となった。

 この関連がみられたがんの多くは、2型糖尿病と関連しており、これはメトホルミンによる直接的ながん予防効果、あるいは2型糖尿病の管理による間接的な効果が示されている可能性があるとしている。

メトホルミンが多くの種類のがんのリスク低下と関連

 メトホルミンは糖尿病管理での役割に加えて、がんリスクを軽減する可能性があることが、米国国立がん研究所(NCI)などによる、メトホルミン使用とがんリスクの関連を包括的系統的にレビューした166件の研究のメタ解析で示された。

 メトホルミンは、糖尿病治療で使用頻度の高い治療薬であり、まれに乳酸アシドーシスの副作用はあるものの、低血糖のリスクが低く、一般的に安全性が高く、安価で入手しやすい薬として知られている。

 研究は、オハイオ州立大学医学部がん予防管理部門のHolli Loomans-Kropp氏らによるもの。研究成果は、「Journal of the National Cancer Institute」に掲載された。

 研究グループは今回、PubMed/MEDLINE、Embase、Cochrane Library、Web of Science、Scopusで特定された2023年3月までに公開された研究のなかから、メトホルミンについて「使用歴あり」「使用あり」に分類し、がんの診断をアウトカムとした研究を対象に、変量効果モデルを使用し相対リスク(RR)推定値を算出した。可能な場合には特定のがんの種類ごとに評価した。

 対象となった研究には、後ろ向きコホート研究 85件、症例対照研究 55件、横断研究 2件、前向きコホート研究 21件、ランダム化比較試験 1件が含まれた。

 その結果、メトホルミンの使用は全体的ながん発症率の有意な減少と関連しており、前向きコホート研究[RR 0.65、95%CI 0.37~0.93]と症例対照研究[RR 0.55、95%CI 0.30~0.80]では同様だった。一方で、横断研究[RR 0.96、95%CI 0.67~1.24]、後ろ向きコホート研究[RR 0.86、95%CI 0.70~1.03]では関連はみられなかった。

 がんの種類別にみると、消化器がん[RR 0.79、95%CI 0.73~0.85]、泌尿器がん[RR 0.88、95%CI 0.78~0.99]、血液腫瘍[RR 0.87、95%CI 0.75~0.99]で、それぞれリスク低下と関連していた。なお、統計学的に有意な出版バイアスもみられた[Egger p<0.001]。

 「メトホルミンの使用と肝臓がんと結腸直腸がんのがん発症率との予防的な関連性が示された。さらに、前立腺、膀胱、子宮頸、食道、胃、頭頸部、口腔、肺、卵巣、甲状腺のそれぞれのがんについても、有意な関連がみられた。このメタ解析の結果は、さまざまな病因を考慮すると、メトホルミンの使用ががんに対して多面的な効果を有する可能性があることを示唆している」と、研究者は述べている。

 興味深いことに、この関連がみられたがんの多くは、2型糖尿病と関連しており、これはメトホルミンによる直接的ながん予防効果、あるいは2型糖尿病の管理による間接的な効果が示されている可能性があるとしている。メトホルミンが処方される主な適応症は2型糖尿病であり、この研究の対照集団と実験集団の多くは糖尿病患者で構成されていた。

 「ただし、メトホルミンが多くの種類のがんのリスク低下と関連している可能性が示されたものの、高い不均一性と論文の出版バイアスもみられた。がん予防におけるメトホルミンの有用性をより深く理解するために、糖尿病のない集団を対象とした追加の研究が必要となる」としている。

Association of metformin use and cancer incidence: a systematic review and meta-analysis (Journal of the National Cancer Institute 2024年1月30日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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