J-DREAMSにアボットの「FreeStyleリブレ」がデータ連携 CGMとしてはじめて データベースと電子カルテに連携

2023.07.20
 アボットジャパン合同会社は7月19日、日本糖尿病学会と国立国際医療研究センターが共同で立ち上げた「J-DREAMS(診療録直結型全国糖尿病データベース事業)」への、FreeStyleリブレシステムを用いて測定した持続グルコースデータの連携が開始されたと発表した。

 FreeStyleリブレで測定したグルコースデータを、J-DREAMSデータベースと病院の電子カルテに連携することで、研究者や医師は医療情報の全体像が把握しやすくなり、糖尿病の研究や治療において、より適切な情報にもとづいた判断を行いやすくなるとしている。統合されたデータベースは、複数の施設や全国規模の研究での利用も可能。

糖尿病の大規模データベース「J-DREAMS」で糖尿病診療の質を改善

 「J-DREAMS(診療録直結型全国糖尿病データベース事業)」は、日本糖尿病学会(JDS)と国立国際医療研究センター(NCGM)が共同で設立・運営する糖尿病の大規模データベース。2014年度から厚生労働省科学研究費事業として開始された。

 これまでの研究では、糖尿病を担当する診療科の医師は、データベース作成のために別途データを入力し直す必要があったが、J-DREAMSでは、「糖尿病標準診療テンプレート」と呼ばれる入力画面を電子カルテの一部として作成し、診療録の一部としてその入力画面に入力を行う。

 入力されたデータは、個人情報を匿名化したうえで、NCGM内に設置された糖尿病クラウドセンターに自動的に蓄積される。そのため、通常診療の診療録記載以外に入力し直す必要がなく、データベースを効率的に作成することができる。

 さらに、「糖尿病標準診療テンプレート」を用いることで、個々の患者の検査情報や薬剤情報のみならず、合併症情報も一括で取り込み、比較検討することができるようになっている。さらに、標準化されたカルテを用いることで、糖尿病診療の質の改善も期待できる。

 J-DREAMSには2023年5月時点で70施設が参加しており、9万4,000人以上の患者が登録、糖尿病の研究のために医療情報を共有されている。

FreeStyleリブレシステムがCGMとしてはじめて「J-DREAMS」にデータ連携

 一方、アボットの「FreeStyleリブレ」は、数日間にわたる血糖変動の傾向をみることができるCGM(持続グルコースモニタリング)システム。上腕の後ろ側に専用のセンサーを装着し、スマートフォンあるいは専用のリーダーをセンサーにかざすと、その画面に測定値が表示される。

 1つのセンサーで最長14日間の血糖変動を記録できる。FreeStyleリブレLinkアプリを使用すれば、スマートフォンで迅速かつさりげなくセンサーを読み取ることも可能。また、糖尿病患者が自身の血糖データを、リブレViewを介して医師と共有することができる。

 このほど、情報の共有に同意したFreeStyleリブレシステムのユーザーのグルコースデータを、NCGMが管理する安全なクラウドサーバーに転送することで、NCGMでのJ-DREAMSデータベースへのグルコースデータ連携が可能性になった。

 FreeStyleリブレ4システムで測定したデータを、J-DREAMSと連携することで、医師や研究者は、糖尿病の日々の診療や長期にわたる研究の際、CGMで測定したグルコースデータを他の医療情報とともに利用することが可能になったとしている。

 FreeStyleリブレで測定されたデータは、TIR(Time in Range:血糖値が目標範囲内に収まっている時間が1日のうち何パーセントを占めるかを示した数値)や、AGP(Ambulatory Glucose Profile:連続して測定・記録された血糖値や間質液中グルコース値を集約し、その傾向を視覚的に把握しやすくした解析方法)などの情報を含むレポート形式で、電子カルテ情報を補完する。

電子カルテシステムでのAGPレポートイメージ
出典:アボットジャパン合同会社、2023年

CGMで測定した日本人のグルコースデータが連携される意義

 J-DREAMSは、糖尿病治療のさらなる進歩に貢献するアウトカム研究のための、研究者や医師による、大規模で継続的な糖尿病データベース構築を実現している。J-DREAMSデータベースに連携し、研究者や医師がより包括的なデータを見ることが可能になったことで、すべての患者の病態や状況を考慮した、より個別化された治療の実現が期待される。

 国立国際医療研究センター(NCGM)糖尿病情報センター長であり、J-DREAMSの研究代表でもある大杉満氏は、次のように述べている。
 「日本人の糖尿病患者さんのグルコースデータを評価、解釈する際、国外と同じ基準や方法が常にそのまま使えるわけではありません。たとえばCGMの評価指標の1つであるTIRの国外で設定された目標値は、日本人の患者さんでの適切な目標値とは異なっている可能性があることが指摘されてきました。そのためCGMで測定した日本人のグルコースデータが連携されることは非常に意味があります。FreeStyleリブレデータを連携することで、J-DREAMSはこれまで以上に日本の糖尿病診療の質の向上および有効な予防法の確立に貢献できると考えています」。

 「J-DREAMSという、糖尿病の包括的なデータベースを構築するプロジェクトには大きな可能性があります。この取り組みは、今後数年間で、糖尿病の研究と治療に大きな革新をもたらしてくれると信じています。糖尿病は、すべての家族に影響を与えると言える個人的な疾患で、私たちの多くは、愛する人々の中に糖尿病とともに生きる人がいます。研究者や医師が、より包括的なデータを見ることが可能になることで、すべての人の病態や状況を考慮した、より個別化された治療が可能になることを願っています」と、アボットジャパン合同会社では述べている。

 なお、FreeStyleリブレは、日本では2016年5月に製造販売承認を取得し、2017年1月に発売された。1型・2型等の病型を問わず、インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っている入院中以外の患者に、C150血糖自己測定器加算7.「間歇スキャン式持続血糖測定器によるもの」が適用される。FreeStyleリブレは、60ヵ国以上で450万人以上の人々に使用されているとしている。

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