肥満2型糖尿病への減量手術後1年で脂肪肝はほぼ解消される[Annals of Internal Medicine]

2021.12.08
肥満2型糖尿病への減量手術後1年で脂肪肝はほぼ解消される

 肥満2型糖尿病患者に対して減量手術を行うと、術式にかかわらず術後1年で脂肪肝がほぼ解消されるというデータが報告された。オスロ大学(ノルウェー)のKathrine Aglen Seeberg氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に11月30日掲載された。

 肥満患者の大半に脂肪肝が認められ、その一部は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を経て肝線維化が進行し肝硬変に至り、肝がんハイリスク状態となる。一方、減量によって脂肪肝を改善可能なため、内科治療に抵抗性のある高度肥満患者に対しては、減量・代謝改善手術(減量手術)が治療選択肢となる。ただし、減量手術の術式によって脂肪肝改善効果が異なるのかを検討したランダム化比較試験は、これまで行われていない。

 これを背景としてSeeberg氏らは、脂肪肝および肝線維化に対する、スリーブ状胃切除術(SG)とルーワイ胃バイパス術(RYGB)施行後1年間での有効性を比較検討した。研究デザインは、単一施設での無作為化比較対照試験。ノルウェーの三次医療機関で肥満治療を受けている2型糖尿病患者100人(女性65%、平均年齢47.5歳、平均BMI42)を、SGまたはRYGBに1:1で割り付け、2013年1月~2018年2月に手術を施行した。

 術後1年間のフォローアップで、MRIで評価した肝脂肪分率は、SG群では-19.7%(95%信頼区間-22.5~-16.9)となり、RYGB群でも-21.5%(同-24.3~-18.6)と同レベルの有意な低下が確認された。また1年間で、ほぼ全ての患者(SG群94%、RYGB群100%)が、脂肪肝が認められないか、肝逸脱酵素に基づき悪性度は低いと判定されるレベルに改善していた。一方、線維化マーカーであるELFスコアは、対象全体の77%は不変であり、18%の患者はスコアが上昇し線維化の進行が認められた。線維化の進行に関しても、術式による群間差は見られなかった。

 著者らは本研究の限界点として、単一施設での検討であること、追跡期間が1年と短いこと、術式によるアウトカムの違いを検出するための統計学的パワーが不足している可能性があることなどを挙げている。その上で、「減量手術後1年で脂肪肝はほぼ完全に解消され、SGとRYGBはいずれも脂肪肝の軽減に極めて効果的だった。どちらも適切な治療オプションと言える」と結論付けている。ただし、1年間という短期間では線維化レベルへの影響がほとんど認められなかったことから、「より長期間の追跡評価が求められる」と付け加えている。

[HealthDay News 2021年11月29日]

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