SGLT2阻害薬が2型糖尿病・CKD患者の貧血リスクを19%低減 貧血イベントの発生率も21%低下
SGLT2阻害薬が2型糖尿病・CKD患者の貧血リスクを19%低減 貧血イベントの発生率も21%低下
SGLT2阻害薬の使用は、2型糖尿病および慢性腎臓病(CKD)のステージ1~3の患者での、貧血リスクの低下と関連していることが、CREDENCE試験およびDAPA-CKD試験の1万3,799人を対象とした解析で示された。2.5年(中央値)の追跡期間に、SGLT2阻害薬はGLP-1受容体作動薬に比べて、貧血の発生リスクを19%低下させた。
研究は、台湾の国立成功大学のJia-Chian Hu氏らによるもので、研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載された。
腎機能が低下すると、エリスロポエチン産生能の低下にともない貧血になりやすいことが知られている(腎性貧血)。SGLT2阻害薬による貧血リスクの低下がこれまでに報告されているが、重度のアルブミン尿を示すCKD患者を対象とするなど、厳格な適用要件が設けられており、実臨床でのSGLT2阻害薬の適応となるCKD患者には一般化できないという課題があった。
そこで研究グループは、2型糖尿病とCKDの合併患者を対象としたCREDENCE試験およびDAPA-CKD試験の事後解析を行った。
CREDENCE試験は、アルブミン尿が確認されたCKDを有する2型糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬(カナグリフロジン)による腎アウトカムを検証した試験。また、DAPA-CKD試験は、2型糖尿病の有無に関わらず、アルブミン尿が確認されたステージ2~4のCKD患者を対象に、SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン)による腎アウトカムを検証した試験。
対象となったのは、2型糖尿病およびCKDを合併した計1万3,799人で、1万2,331人はSGLT2阻害薬が投与され(平均年齢 62.4歳、男性 61.2%)、1,468人はGLP-1受容体作動薬が投与されていた(平均年齢 61.5歳、男性 61.3%)。
HbA1c値は6.5%以上で、CKDのステージ1~3を合併し、2016年1月1日~2021年12月31日にSGLT2阻害薬あるいGLP-1受容体作動薬の投与を開始。主要アウトカムは、貧血イベントの発生(ヘモグロビン値 12~13g/dL未満、または国際疾病分類第10版に準拠)、または貧血治療の開始を含む複合アウトカムとした。
その結果、追跡期間である2.5年(中央値)に、複合貧血アウトカムはSGLT2阻害薬群で2,887件、GLP-1受容体作動薬群で429件が確認された。
SGLT2阻害薬群は、GLP-1受容体作動薬群と比較して、貧血の複合アウトカムの発生率が19%低かった[HR 0.81、95%CI 0.73~0.90]。
SGLT2阻害剤は、貧血イベントの発生率の21%の低下とも関連したが[HR 0.79、95%CI 0.71~0.87]、貧血治療の開始率の低下とは関連しなかった[HR 0.99、95%CI 0.83~1.19]。
ベースライン時のヘモグロビン値、ヘマトクリット値、赤血球数は、SGLT2阻害薬群[中央値 13.8g/dL、41.0%、4.7×106/μL]と、GLP-1受動態作動薬群[中央値 13.9g/dL、41.5%、4.7×106/μL]と同等だった。これらの血液学的パラメーターは一般的に、SGLT2阻害薬群では変化しないが、GLP-1受動態作動薬群では減少する傾向が示されている。
過去の臨床試験のメタアナリシスでは、SGLT2阻害薬はプラセボと比較して、腎臓アウトカムのリスクを38%低下させることが示されており、おそらくSGLT2阻害薬が高血糖による糸球体過濾過を減少させるためと考えられる。SGLT2阻害薬は、血糖降下と腎臓への有益な効果に加えて、2型糖尿病およびCKD患者のヘモグロビン値を増加させることも示されている。
「糖尿病合併CKD患者へのSGLT2阻害薬の使用は、貧血の複合アウトカム、とくに貧血イベントの発生リスク低下と関連していた。この結果は、3年の追跡期間を通じたGLP-1受動態作動薬との比較で、有意差を示した血液検査指標の変化によっても支持される。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病およびCKD患者での貧血の発生率を減らすための補助療法として考慮される可能性がある」と、研究者は結論している。