【新型コロナ】オミクロン株は感染者数の増加率と伝播性が高い ワクチン2回接種による予防効果はデルタ株より低い

2022.01.12
 新型コロナウイルスのオミクロン株は、2021年11月に南アフリカでオミクロン変異株が検出されたのち、急速に世界に広がった。日本でも11月28日にナミビアからの帰国者が陽性と診断され、その後にオミクロン変異株と確定診断された。オミクロン株についての、日本での詳細な情報が集まりつつある。

オミクロン株は倍加時間が短く、感染者数の増加率も高い

 新型コロナのオミクロン株について、国立感染症研究所は2021年11月26日に注目すべき変異株(VOI)として位置づけ、2021年11月28日には懸念される変異株(VOC)に位置付けを変更した。

 日本でも同年11月28日にナミビアからの帰国者が新型コロナ陽性と診断され、その後オミクロン変異株と確定診断された。しかし、オミクロン株の感染者の臨床経過やウイルス排出期間についての情報はまだ限られている。

 オミクロン株は基準株に比べ、スパイクタンパク質に30ヵ所程度のアミノ酸置換があり、3ヵ所の小欠損と1ヵ所の挿入部位をもつ特徴がある。このうち15ヵ所程度の変異は受容体結合部位にある。

 同研究所は、オミクロン株の感染力(感染・伝搬性)について、「引き続き知見の集積が必要」としながらも、「南アフリカでは高い実効再生産数が報告され、イングランドでは感染者数が倍になる倍加時間の短縮や感染者数の高い増加率が報告されている」「海外から報告された集団発生事例での高い発病率や、デルタ株よりも多くの家庭内二次感染例が報告されたことも伝播性の増加を示唆している」としている。

 さらに、「解釈には慎重を要する」としながらも、「世代時間や潜伏期間が、デルタ株に比較して短縮している可能性を示す所見がある」「倍加時間の短縮は、感染性の増大と世代時間の短縮の両方の影響を加味する必要がある」と指摘。

 さらに、「国内の積極的疫学調査から得られた暫定的な結果からは、これまでの事例(従来株やデルタ株による)と比較し、感染・伝播性はやや高い可能性はあるが、感染様式の変化や著しい感染・伝播性の増加の根拠は得られていない」として、「基本的で適切な感染対策(マスク着用、手指衛生、換気の徹底など)は引き続いて有効であることが観察されており、感染対策が比較的守られている状況下では爆発的な感染拡大にはいたっていない」とし、「引き続き日本でのオミクロン株の感染・伝播性に関する知見の蓄積が必要」としている。

ワクチン2回接種による発症予防効果はデルタ株より低い

 ワクチン効果への影響については、「ワクチン接種や自然免疫による免疫を逃避する性質が遺伝子配列やラボでの実験、疫学データから示唆されている」「ワクチン2回接種による発症予防効果がデルタ株より低い可能性が示されている」「3回目接種(ブースター接種)によるオミクロン株感染の発症予防効果が高まる可能性が示唆されているが、3回目接種からの日数が数週間程度と非常に短いデータであることから、中長期的にこの効果が持続するかは不明」としている。

 抗体医薬品の効果への影響については、「抗原性の変化により、モノクローナル抗体を用いた抗体医薬品の効果への影響も懸念されている」としている。さらに、重症度については、オミクロン株に感染した109例の分析結果として「94%が無症状か軽症で、デルタ株より重症化しにくい可能性が示唆される」としながらも、「重症化リスクがある程度低下していたとしても、感染例が大幅に増加すると、重症化リスクの低下分が相殺される可能性も考慮する必要がある」と注意を呼びかけている。

オミクロン株は2回のワクチン接種を受けていれば10日後以降はウイルスは減少

 同研究所はまた、国立国際医療研究センターと共同でオミクロン株の感染者が他人に広げるリスクがいつ、どの程度あるかについて、2021年12月22日までに感染者登録された21例、83検体を対象に調査した。調査対象者の平均年齢は男性19例、女性2例。ワクチン2回接種者17例、3回接種者2例、未接種者2例だった。症状は軽症17例、無症状4例で、重症者例はなかった。

 オミクロン株感染例の呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)を分析した結果、Cq値は発症あるいは診断日から3~6日でピークを迎え、その後約10日で低下することが分かった。診断または発症10日目以降でも、RNAが検出される検体は認められたが、ウイルス分離可能な検体はみられなかった。

 この結果について同研究所は、「2回のワクチン接種から14日以上経過している者で無症状者および軽症者では、発症または診断10日後以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いことが示唆された」としている。

オミクロン株症例でのCq値の日数別推移
出典:国立感染症研究所、2022年

オミクロン株症例11例の臨床経過とウイルス排出期間を公開 NCGM

 国立国際医療研究センター(NCGM)は1月5日、新型コロナウイルスのオミクロン変異株に感染した11例の臨床経過とウイルス排出期間に関する報告をウェブサイトで公表した。研究成果は「Global Health & Medicine」に掲載された。

 報告の対象となったのは、流行初期の2021年11~12月に同センター病院に入院したオミクロン変異株感染患者11人。年齢の中央値は39歳(範囲:1歳~64歳)、10人が男性だった。全員が海外からの帰国者で、2回のワクチン接種歴があったが、3回目のブースター接種を完了した患者はいなかった。

 調査時は11人中3人が無症状であり、入院時に多く認めた症状としては発熱、咽頭痛(5人)、咳嗽(4人)だった。肺炎または酸素療法が必要な患者はいなかったため、抗ウイルス薬やステロイドはどの患者にも投与されていない。ただし、重症化リスクを有する1人に対してはソトロビマブ(ゼビュディ)が投与された。

 ウイルスの量を示す指標のひとつにPCRのCt値がある。今回の研究は、Ct値が検出感度以下の>45になるのに19.7日、>35となるのに10.6日という結果になった。

 オミクロン変異株が流行する以前の研究では、Ct>35となると新型コロナウイルスが検出される可能性が低くなると報告されている。今回の研究ではCt値が35未満となるのに10.6日かかっていたが、これはワクチンを接種せずに罹患した人の場合とほぼ同じ期間だ。

 これにより、「オミクロン変異株による感染では、2回のコロナワクチンが接種され症状が軽い場合であっても、ワクチンを接種せずに罹患した人と同じ程度の期間ウイルスの排出が続く可能性」を示しており、感染予防策は今後も重要だとしている。

オミクロン株 発症(診断)からの日数とCt値の推移
出典:国立国際医療研究センター、2022年

SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第5報) (国立感染症研究所 2021年12月28日)
SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第1報) (国立感染症研究所 2022年1月5日)
新型コロナウイルス、オミクロン変異株に感染した11例の臨床経過とウイルス排出期間に関する報告 (国立国際医療研究センター 2022年1月5日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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