就寝時間を遅らせる癖があると睡眠が悪化 就寝を先延ばしにする習慣を測定するスケールを開発 精神・神経医療研究センター
遅寝・遅起きは睡眠不足の原因に 「就寝を先延ばしにする傾向」を評価
就寝を先延ばしにし、眠りについてから目覚めるまでの時間帯(睡眠相)が遅れる「睡眠相後退」は、遅寝・遅起きになってしまうことで、睡眠不足などの原因になる。
特別な用事がないにもかかわらず、意図していた時刻よりも、就寝時刻を先延ばししてしまう傾向が、睡眠相後退・不眠・睡眠不足などに関連することが分かっている。
そこで国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、睡眠相後退を測定するスケール(BPS)の日本語版を開発した。574人の労働者を対象に調査を行い、睡眠習慣などを判定するのに有用であることを確かめた。
この「BPS(就寝時の先延ばしスケール)」は、オランダのユトレヒト大学で、糖尿病患者のセルフケアや就寝の遅れの影響などを研究している、フロア クローゼ氏らが開発したもの。
NCNPの研究グループは今回、クローゼ氏の許諾を得て、同スケールの翻訳などを行い、習慣的な睡眠不足のある100人を対象に、スケールの内容の明瞭さや理解しやすさを確かめ、日本語版を開発した。
このスケールを用いることで、睡眠相後退・不眠・睡眠不足の背後にある、寝つきの悪化の要因となる行動習慣である「就寝を先延ばしにする傾向」を評価できるようになるとしている。
1 | 自分が意図していたより、寝る時間が遅くなる。 |
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3 | 夜、明かりを消さなければならない時間になったら、すぐに消す。(反転項目) |
4 | 寝る時間になっても、他のことをしていることが多い。 |
5 | 本当は寝ようと思っている時でも、すぐに他の事に気をとられてしまう。 |
6 | 決まった時間に寝ない。 |
7 | 決まった就寝時間があり、それを守っている。(反転項目) |
8 | 決まった時間に寝たいと思うが、できない。 |
9 | 寝る時間になったら、それまで行っていた活動を容易に止められる。(反転項目) |
日本の労働者を調査 スケールの信頼性を確認
研究グループは今回、このスケールの日本語版の信頼性などを検証するため、信頼性と妥当性を検証するために、「慢性睡眠不足症候群」以外の睡眠障害のない、20~65歳の労働者574人を対象に調査した。参加者は全員が日勤で、14日後に280人から有効回答を得た。
その結果、BPS得点の高さは、睡眠時間の短さ、睡眠相後退を示す指標である「睡眠中央時刻」の遅れ、睡眠不足傾向と有意な関連を示した。
睡眠中央時刻は、眠りにつく時刻と目覚める時刻のちょうど中間にあたる時刻。この時刻が遅いほど、睡眠相が後退していることを示す。
また、BPSの得点が高い人は、終業時刻が遅く、就寝時刻を先延ばしすることへの抵抗感が薄い傾向が示された。
研究グループは、構造的妥当性を検討するために分析を行ったところ、モデルの適合度が不十分だったため、因子負荷量が低い項目2を除外して、2因子構造で再度分析した。すると適合度が向上したため、日本語版では原版から項目2を除外することにした。
再検査信頼性や内的一貫性は、項目2を含めた場合でも除外した場合でも、十分であることが示されたという。
日本語版BPSの各項目の平均点は2.727点、合計点は21.69点だった。繰り返し検査を行ったときは、前者では1.13点以上、後者では9.08点以上の変化がみられた際に、誤差を越えた変化と判断するのが適切であることが示された。
研究は、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部の栗山健一部長、羽澄恵研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、総合学術雑誌「BMC Psychology」に掲載された。
「研究から、日本の労働者では、就寝先延ばしの傾向が睡眠不足や睡眠相後退と関連していることが示唆されました。今後は、この日本語版BPSを用いて、日本人の就寝先延ばし傾向の疫学調査を行うとともに、就寝先延ばし傾向とさまざまな睡眠障害の関連についても明らかにしたいと考えています」と、研究者は述べている。
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
国立精神・神経医療研究センター 睡眠・覚醒障害研究部
Development and validation of the Japanese version of the Bedtime Procrastination Scale (BPS-J) (BMC Psychology 2024年2月1日)