【新型コロナ】高齢・喫煙・糖尿病・肥満が重症化リスクを高める要因 CVDは転帰不良の危険因子

2022.10.17
 新型コロナが重症化し、死亡や予後不良のリスクを高める主な原因は、▼高齢、▼喫煙習慣、▼糖尿病や肥満などの心血管疾患の危険因子――。心血管リスク要因が、新型コロナが重症化し死亡リスクを高める主な原因という大規模な調査の結果を、米国のミシガン大学医学部が発表した。

心血管疾患(CVD)は新型コロナ患者の転帰不良の危険因子

 新型コロナが重症化し、死亡や予後不良のリスクを高める主な原因は、▼高齢、▼喫煙習慣、▼糖尿病や肥満などの心血管疾患の危険因子――。心血管リスク要因が、新型コロナが重症化し死亡リスクを高める主な原因という大規模な調査の結果を、米国のミシガン大学医学部が発表した。

 研究グループは、2020年3月1日~7月1日に全米の68ヵ所で、新型コロナが重症化し集中治療室に入院した5,133人(平均年齢61歳、男性62.9%)の患者のデータを分析した。うち22.9%(1,174人)はCVD(冠動脈疾患、うっ血性心不全、心房細動)の既往があった。

 28日間の院内死亡率を主な転帰とし、14日以内の心血管イベント(心停止、新規発症不整脈、新規発症心不全、心筋炎、心膜炎、脳卒中)を二次転帰として、年齢・性別・人種・BMI・喫煙歴・併存疾患を調整し解析した。

 28日以内に対象者の34.6%(1,178人)が死亡し、17.9%(920人)が心血管イベントを発症した。

 CVDの既往により新型コロナによる死亡のオッズ比は1.15(95%CI、0.98~1.34)となり、CVDが新型コロナによる死亡リスクの上昇と関連していることが示された。一方、CVDの既往と心血管イベントとのあいだに独立した関連はみられなかった。

 さらに、ICU入院時の心筋損傷は、CVDの有無にかかわらず、死亡のより高いオッズ比(調整オッズ比 1.93[95%CI、1.61~2.31])、および心血管イベント(調整オッズ比 1.82[95%CI、1.47~2.24])と関連していた。

 「心血管疾患の既往歴の有無に関わらず、心血管リスクのある患者さんは、死亡リスクが大幅に上昇しました。心血管リスク要因が、新型コロナの重症化により死亡リスクを上昇させる主な原因だと考えられます」と、ミシガン大学心血管センターのSalim Hayek氏は言う。

 「糖尿病、高血圧、喫煙、肥満などの危険因子により、新型コロナの重症化リスクはより高くなることに注意する必要があります」と、同大学医学部心臓病学のAlexi Vasbinder氏は言う。

 心筋梗塞などで心筋が傷害を受けると増える心筋由来のタンパクであるトロポニンについては、ICU入院患者のほぼ半数で高値になっていた。トロポニン値がもっとも高かった患者は、心筋損傷のない患者に比べ、死亡リスクがほぼ3倍高かった。

重症化リスクの高い患者を選別する方法の開発へ

 「私たちはいま、心不全や冠状動脈疾患などの心臓病の進行により、新型コロナの重症化リスクがもっとも高い患者さんのグループを選別する方法を開発する研究に取り組んでいます」と、Vasbinder氏は言う。

 「新型コロナが重症化した患者さんの多くで、心臓損傷の兆候がみられました。今回の研究は、新型コロナは全身性炎症に関連する多臓器損傷をともなう肺疾患だという見方を強めるものです」と、Hayek氏は述べている。

 「新型コロナが重症化した患者さんで多くみられた心臓損傷のエビデンスは、新しい合併症の発症や既存の心臓病の悪化ではなく、重症化とそれがすべての臓器に与えるストレスを反映している可能性が高いとみています」としている。

 研究は、米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)の支援を受けて行われたもの。研究成果は、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に掲載された。

Smoking, diabetes and obesity - not preexisting heart disease - bigger risk of COVID-19 death (ミシガン大学 2022年10月12日)
Relationship Between Preexisting Cardiovascular Disease and Death and Cardiovascular Outcomes in Critically Ill Patients With COVID-19 (Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes 2022年10月4日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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