【新型コロナ】コロナ禍でアルコール関連疾患の入院が増加 自粛期間中の飲酒に注意
アルコール関連肝疾患による入院は、コロナ禍以前に比べ1.2倍に増えた。新型コロナの流行によりアルコールの消費量が増加しているという報告がある。
「自粛期間中の飲酒にはとくに注意が必要です」と、研究者は述べている。
コロナ禍によりアルコールの消費量が増えている
アルコールの乱用により世界中で毎年約300万人が死亡しており、公衆衛生の大きな課題となっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、ソーシャルディスタンスの維持や都市のロックダウン、経済的な危機によるストレスから、アルコールの消費の増加と、肝疾患をはじめとするアルコールに関連する疾患の増加が懸念されている。世界保健機関(WHO)なども、有害なアルコールの消費について警告を発している。
米国や英国では実際に、コロナ禍によりアルコールの販売量が増加し、家庭でもアルコール消費量が増加したと報告されている。日本政府の調査でも、2020年4月以降の家計のアルコール消費支出は、1年前に比べて増加している。
アルコールの乱用による代表的な疾患として、肝硬変をはじめとする肝疾患や膵炎があるが、今回のCOVID-19の流行がアルコール関連の肝疾患や膵炎の入院に与える影響はまだよく分かっていない。
コロナ禍でアルコール関連の入院は約1.2倍に増加 アルコール性肝硬変が最多
そこで、京都大学の研究グループは、全国の有力病院が参加しているプロジェクトであるQIP(Quality Indicator/Improvement Project)のデータベースを用いて、入院日が2018年7月1日~2020年6月30日の、アルコール関連の肝疾患および膵炎の月別の1,000入院あたりの入院率を調査した。
対象となったのは、全国257病院の、アルコール関連肝疾患による入院302万6,389件、または膵炎による入院1万242件。
その結果、COVID-19の流行時の2020年4~6月の入院率は、流行前の期間(2018年7月~2020年3月)と比較して、約1.2倍に増加していた。入院した原因疾患で最多なのはアルコール性肝硬変だった。
研究は、京都大学医学研究科の今中雄一教授、國澤進准教授、糸島尚氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
入院率は男性が高いが、増加の程度は女性の方が大きい
アルコールが身体へ与える影響は性別によって差があるという生物学的な特性が知られており、海外ではCOVID-19の流行下での飲酒量も性別により差があるという報告がある。
そこで性別でも解析を行ったところ、入院患者数は男性の方が多いため、入院率自体は男性が高いものの、2020年4~6月の入院率を前年同月で比較すると、男性では4月 1.1倍、5月 1.2倍、6月 1.2倍、女性では4月 1.4倍、5月 1.9倍、6月 2.0倍となり、女性の方が増加の程度が大きい傾向が示された。
アルコール消費の増加は経済的な危機による精神的ストレスとも関連していることが報告されており、今回のCOVID-19の流行下において、女性がより経済的な影響を受けている可能性も示唆される。
性別による、生物学的な違いに加え、経済的な影響の違いを反映しており、女性はコロナ禍による影響がより深刻である可能性がある。
自粛期間中の飲酒には注意が必要
COVID-19流行によるアルコール消費増加と肝疾患をはじめとするアルコール関連疾患の増加については世界的に懸念され注目されている。
今回の調査では、個々のアルコールの消費量についてはデータベースに情報がないため、個人のアルコール消費量の変化とアルコール関連の肝疾患や、膵炎の入院との関連といった直接的な関連を調べることができなかつた。
「個人のアルコール消費量や肝疾患や膵炎の入院がどう影響を受けているか、さらに調査が必要です。COVID-19の流行が収束しないなか、アルコール関連肝疾患・膵炎の増加が続く可能性があり、自粛期間中の飲酒には注意が必要です」と、研究グループは述べている。
京都大学大学院医学研究科・医学部
The impact of the COVID-19 epidemic on hospital admissions for alcohol-related liver disease and pancreatitis in Japan(Scientific Reports 2021年7月12日)