【新型コロナ】オミクロン株に対する治療薬の効果を検証 感染や増殖を阻害する薬剤はどれか?
承認を受けた治療薬がオミクロン株に対しても有効かを検証
2021年末に新型コロナウイルスの新たな変異株であるオミクロン株が出現し、この変異株の感染者が世界各国で爆発的に増加している。
ウイルス感染は、コロナウイルス粒子表面にあるスパイクタンパク質を介して、ウイルス粒子が宿主細胞表面の受容体タンパク質に結合することで始まる。実用化されたあるいは開発中のCOVID-19に対する抗体薬は、このスパイクタンパク質を標的としており、その機能を失わせる(中和する)ことを目的としている。オミクロン株は、そのスパイクタンパク質に少なくとも30ヵ所の変異を有する。
日本では、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ注射液セット)やソトロビマブ(ゼビュディ点滴静注液)などの抗体薬、あるいはレムデシビル(ベクルリー点滴静注液)やモルヌピラビル(ラゲブリオ)などの抗ウイルス薬がCOVID-19に対する治療薬として承認を受けている。しかし、これらの治療薬がオミクロン株に対して有効なのかどうか明らかにされていなかった。
そこで東京大学医科学研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らの研究グループは、オミクロン株に対する治療薬の効果を調べた。研究成果は、「New England Journal of Medicine (NEJM)」のオンライン速報版で公開された。
はじめに、4種類の抗体薬(バムラニビマブ・エテセビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ、ソトロビマブ)がオミクロン株の培養細胞への感染を阻害(中和活性)するのかどうかを調べた。
その結果、オミクロン株に対する中和活性は、バムラニビマブ・エテセビマブとカシリビマブ・イムデビマブでは著しく低いことが分かった。それに対して、チキサゲビマブ・シルガビマブとソトロビマブは、同変異株に対して中和活性を維持していることが判明した。
続いて、オミクロン株に対する2種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル)の効果を解析した。いずれの薬剤も培養細胞におけるオミクロン株の増殖を抑制することが分かった。
研究グループは、COVID-19治療薬がオミクロン株の増殖を効果的に抑制するのかどうかをCOVID-19の動物モデルを用いて、引き続き検証する予定。
「研究を通して得られた成果は、医療現場での適切なCOVID-19治療薬の選択に役立つだけでなく、オミクロン株のリスク評価など行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となります」としている。
東京大学医科学研究所ウイルス感染部門
Efficacy of antibodies and antivirals against a SARS-CoV-2 Omicron variant (New England Journal of Medicine 2022年1月26日)