新型コロナの流行期に糖尿病患者の血糖管理は悪化 とくに若年者で顕著 医療アクセスの制限が影響か

2025.03.04

 新型コロナが感染流行した2021~2023年に、糖尿病患者の良好な血糖コントロール率は低下しており、その傾向はとくに若年者で顕著だったことが、京都大学などの研究で明らかになった。

 研究で認められた血糖コントロール不良に、パンデミック禍の運動量の低下、社会的支援の減少、心理的ストレスの高まり、さらには医療および薬剤へのアクセスの制限などが寄与している可能性が考えられるとしている。

新型コロナの流行期に糖尿病患者のHbA1cが上昇
良好な血糖管理が減少 とくに若年者で顕著

 新型コロナが感染流行した2021~2023年に、糖尿病患者の良好な血糖コントロール率は低下しており、その傾向はとくに若年者で顕著だったことが、京都大学などが米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを解析した研究で明らかになった。

 研究は、京都大学大学院医学系研究科の井上浩輔准教授(社会疫学、白眉センター)とハーバード大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」にオンライン掲載された。

 研究グループは今回、2013~2023年の米国成人の糖尿病の有病率と血糖コントロールの時系列トレンドを評価し、結果として、2013~2023年に成人の糖尿病の有病率は大きく変わらなかったものの、新型コロナが流行した2021~2023年には、糖尿病患者での良好な血糖コントロールの割合は低下しており、とくに若年成人でその傾向は顕著だったことを明らかにした。

 20歳以上の成人でHbA1cの測定値がある者を対象にデータを解析し、糖尿病はHbA1c値≥6.5%、空腹時血糖値≥126mg/dL、または医師の診断によって定義し、良好な血糖コントロールはHbA1c値<7.0%と定義した。

 その結果、成人の糖尿病の有病率は、2013~2014年に12.8%で、2021~2023年に14.1%で、2013~2023年に大きく変わらなかった。

 一方で、糖尿病患者のHbA1c値は、2017~2020年に7.31%だったのが、2021~2023年には7.60%になり、また良好な血糖コントロールは、2017~2020年に54.3%だったのが、2021~2023年には43.5%になり、それぞれ低下したことが明らかになった。

 とくに若年成人でのHbA1c値の増加と血糖コントロール率の低下は顕著で、HbA1c値は、2017~2020年に7.43%だったのが、2021~2023年には8.51%になり、また良好な血糖コントロールは、2017~2020年に57.4%だったのが、2021~2023年には37.1%になった。

コロナ禍で糖尿病患者の良好な血糖コントロール率が低下
とくに若年成人で顕著に認められた

出典:京都大学、2025年

医療アクセスの制限や生活習慣の変化が影響か

 研究で認められた血糖コントロール不良に、パンデミック禍の運動量の低下、社会的支援の減少、心理的ストレスの高まり、さらには医療および薬剤へのアクセスの制限などが寄与している可能性が考えられるとしている。

 これまで新型コロナのパンデミックでの医療アクセスの制限や生活習慣の変化が、疾患の診断やコントロールに影響を与えたことが示されていたが、糖尿病の頻度やコントロールが実際どの程度変化したかについては明らかにされていなかった。

 「新型コロナのパンデミックは、すべての人の生活に少なからず影響を与えたが、糖尿病診療も例外ではなく、その影響がとくに若年患者において強いことを示した本研究結果は、社会・臨床にとって重要なエビデンスになると考えている」と、研究者は述べている。

 「日本など、米国以外の国でも同様の傾向が認められるかについては、さらなる検討が必要だが、本研究結果をもとに、若年層の糖尿病コントロールの向上を目的とした公衆衛生の取り組み・政策の議論につなげることが期待される」としている。

京都大学大学院医学研究科・医学部
Prevalence and Control of Diabetes Among US Adults, 2013 to 2023 (Journal of the American Medical Association 2025年2月27日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

インクレチン(GLP-1・GIP/GLP-1)受容体作動薬 SGLT2阻害薬 NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療 骨粗鬆症 脂質異常症 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症 FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症 褐色細胞腫
GLP-1受容体作動薬の種類と使い分け インスリンの種類と使い方 糖尿病関連デジタルデバイスの使い方 骨粗鬆症治療薬の使い分け 二次性高血圧 糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント 1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプや持続血糖測定器など)
Childhood Cancer Survivor(CCS)の小児期から成人にかけての内分泌診療 小児・思春期1型糖尿病患者・家族への指導・支援 成人期を見据えた小児期発症1型糖尿病の診療
エネルギー設定の仕方 3大栄養素の量と質 高齢者の食事療法 食欲に対するアプローチ 糖尿病性腎症の食事療法
神経障害 糖尿病性腎症 服薬指導-短時間で患者の心を掴みリスク回避 多職種連携による肥満治療 妊娠糖尿病 運動療法 進化する1型糖尿病診療 糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病患者の足をチーム医療で守る 外国人糖尿病患者診療

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料