新型コロナの流行期に糖尿病患者の血糖管理は悪化 とくに若年者で顕著 医療アクセスの制限が影響か
新型コロナが感染流行した2021~2023年に、糖尿病患者の良好な血糖コントロール率は低下しており、その傾向はとくに若年者で顕著だったことが、京都大学などの研究で明らかになった。
研究で認められた血糖コントロール不良に、パンデミック禍の運動量の低下、社会的支援の減少、心理的ストレスの高まり、さらには医療および薬剤へのアクセスの制限などが寄与している可能性が考えられるとしている。

新型コロナの流行期に糖尿病患者のHbA1cが上昇
良好な血糖管理が減少 とくに若年者で顕著
新型コロナが感染流行した2021~2023年に、糖尿病患者の良好な血糖コントロール率は低下しており、その傾向はとくに若年者で顕著だったことが、京都大学などが米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを解析した研究で明らかになった。
研究は、京都大学大学院医学系研究科の井上浩輔准教授(社会疫学、白眉センター)とハーバード大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」にオンライン掲載された。
研究グループは今回、2013~2023年の米国成人の糖尿病の有病率と血糖コントロールの時系列トレンドを評価し、結果として、2013~2023年に成人の糖尿病の有病率は大きく変わらなかったものの、新型コロナが流行した2021~2023年には、糖尿病患者での良好な血糖コントロールの割合は低下しており、とくに若年成人でその傾向は顕著だったことを明らかにした。
20歳以上の成人でHbA1cの測定値がある者を対象にデータを解析し、糖尿病はHbA1c値≥6.5%、空腹時血糖値≥126mg/dL、または医師の診断によって定義し、良好な血糖コントロールはHbA1c値<7.0%と定義した。
その結果、成人の糖尿病の有病率は、2013~2014年に12.8%で、2021~2023年に14.1%で、2013~2023年に大きく変わらなかった。
一方で、糖尿病患者のHbA1c値は、2017~2020年に7.31%だったのが、2021~2023年には7.60%になり、また良好な血糖コントロールは、2017~2020年に54.3%だったのが、2021~2023年には43.5%になり、それぞれ低下したことが明らかになった。
とくに若年成人でのHbA1c値の増加と血糖コントロール率の低下は顕著で、HbA1c値は、2017~2020年に7.43%だったのが、2021~2023年には8.51%になり、また良好な血糖コントロールは、2017~2020年に57.4%だったのが、2021~2023年には37.1%になった。
とくに若年成人で顕著に認められた

医療アクセスの制限や生活習慣の変化が影響か
研究で認められた血糖コントロール不良に、パンデミック禍の運動量の低下、社会的支援の減少、心理的ストレスの高まり、さらには医療および薬剤へのアクセスの制限などが寄与している可能性が考えられるとしている。
これまで新型コロナのパンデミックでの医療アクセスの制限や生活習慣の変化が、疾患の診断やコントロールに影響を与えたことが示されていたが、糖尿病の頻度やコントロールが実際どの程度変化したかについては明らかにされていなかった。
「新型コロナのパンデミックは、すべての人の生活に少なからず影響を与えたが、糖尿病診療も例外ではなく、その影響がとくに若年患者において強いことを示した本研究結果は、社会・臨床にとって重要なエビデンスになると考えている」と、研究者は述べている。
「日本など、米国以外の国でも同様の傾向が認められるかについては、さらなる検討が必要だが、本研究結果をもとに、若年層の糖尿病コントロールの向上を目的とした公衆衛生の取り組み・政策の議論につなげることが期待される」としている。
京都大学大学院医学研究科・医学部
Prevalence and Control of Diabetes Among US Adults, 2013 to 2023 (Journal of the American Medical Association 2025年2月27日)