【新型コロナ】塩野義がCOVID-19ワクチンの第1/2相試験で初回投与を完了 BEVSを活用した遺伝子組換えワクチン
アジュバントを変更した新製剤を使用
BEVSは効果と安全性が確立された技術
塩野義製薬が開発しているCOVID-19ワクチンは、国立感染症研究所、九州大学(現京都大学)と共同で、同社グループ会社のUMNファーマが有するBEVSを活用した遺伝子組換えタンパクワクチン。
BEVS(Baculovirus Expression Vector System)は、昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術で、バキュロウイルスや昆虫細胞由来の成分・病原ウイルスの混入なしに抗原タンパクの精製が可能としている。
BEVSは、遺伝子情報そのものを投与し体内で抗原タンパクを合成させるmRNAワクチンなどの新規技術と比べて、抗原発現や精製に一定の開発期間を要する一方で、これを活用したインフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性をもとに承認・実用化されている確立された技術だ。
同社は、BEVSにより発現・精製した抗原タンパクならびに、安全性の観点から、免疫応答を調整する2種類のヘルパーT細胞のバランスを示すTh1/Th2バランスを重視して、免疫を活性化させ効果を補強するアジュバントを選択し、2020年12月より第1/2相臨床試験を実施してきた。
Th1/Th2バランスを維持しつつ、より高い中和抗体価の誘導が必要と判断し、アジュバントを変更した新製剤を用いて、2021年7月末より国内で第1/2相臨床試験を新たに開始した。
進行中の第1/2相臨床試験は、旧製剤と同一の抗原タンパクおよび新たに選択したアジュバントの組み合わせからなる、日本人成人を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験。
同ワクチンを3週間間隔で2回接種した際の安全性、忍容性ならびに免疫原性の結果から、抗原タンパク量の低減化を含めて至適な用量を検討するとともに、各指標を接種後1年間追跡評価する(jRCT:2031210269)。
この試験で用量を決定した後、約3,000例の日本人を対象とする次相試験に速やかに移行し、安全性、有効性のさらなる検討を行うとともに、最終段階の試験を年内に開始すべく準備を進めるとしている。大規模試験の実施や承認申請に向けては、引き続き厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)などとの協議や相談を進めていく予定。